内容説明
苛酷な初年兵訓練に耐えて大陸の戦場に送り込まれ、想像を絶する悪条件下での戦いを生き抜いた一人の下級兵士の見た日中戦争の一断面―敵弾雨飛の山野で歩兵として軽機関銃を手に凄惨な死闘を繰り返し、また衛生兵としてヨーチンを片手に看護にも当たった激務の最前線の日々を綴った感動のノンフィクション。
目次
第1章 兵隊修業の青春
第2章 明日なき運命
第3章 最後の砦・桂林落城
第4章 おぞましき光景
第5章 戦友よ、安らかに眠れ
第6章 国破れて山河あり
著者等紹介
川崎春彦[カワサキハルヒコ]
大正12年、旧朝鮮生まれ。昭和18年、現役兵として鹿児島第45連隊に入営。1週間後中支軍に派遣、現地教育後一兵士として作戦に従軍。19年4月、湘桂作戦に参加。軍医伝令となる。7月、湖南省萬塘鎮にて手榴弾が暴発し、負傷、武漢陸軍病院に入院。10月、広西省興安で原隊復帰。11月、桂林攻略戦参戦後、大〓鎮守備隊。20年2月、第2次編成で独歩517大隊移籍、衛生兵に転科。9月、終戦により武装解除。衛生兵長。終戦後、江西省都昌県での抑留生活を経て昭和21年、鹿児島に帰国。復員後、東京にて銀行員、会社役員を務め、退職後現在に至る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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兵衛介
4
独立歩兵大隊所属の一インテリ歩兵の回想録。軍歴の大半は大陸打通作戦への従軍で占められる。戦闘よりも行軍、食糧難、病気、隊内制裁などの苦労話が多く、それが実際の戦争のリアルだったのだろう。桂林戦の市街戦は興味深く読んだ。2009/12/14
好古
2
【感想】壮絶な体験記だ。著者は当時日本領だった朝鮮に生まれ、戦争末期の昭和18年に入営。人権も糞もない兵営生活を送り大陸へ出征。そこでは既に食糧事情が切迫していて、地獄の様な行軍、野戦、現地調達という名の略奪、市街戦、蔓延する疫病との闘い、負傷からの原隊復帰、本来の任務外の衛生兵も務め、終戦後は収容所でまた飢餓と疫病という別の地獄を経験し何とか生き抜くために自分の持てる才覚、能力全てを費やし奔走する。そしてようやく復員するが居場所もなく…。という壮絶極まる戦争体験を余すところなく読者に突き付ける。2024/12/10
nippon
1
ネット右翼も左翼も読むべし。戦争辛すぎ、この辛さのリアリティを読んで体感すべし2014/05/06
VC
1
従軍は大変。哲学者が書いた「戦場の哲学者」という本でも、兵士は極限の疲労からの逃避手段として死を望むようになる。みたいなことを書いていたが、こりゃあ死にたくもなるぐらいのつらさ。自分の体重より重い荷物を持って1日40km以上歩くなんて私には無理ですね。あと、著者は映画の主人公なみの活躍をしていますのでその面から見ても面白い一冊。2010/11/29
岩田貴雄
0
昭和18年11月5日に入隊し、終戦後には抑留された人の話。著者である川崎氏の従軍話。舞台は日中戦争。食料調達に苦労したようで、補給がままならず糧秣は現地調達(略奪に近い)。補給を軽視した旧日本軍の姿が見える。訓練中の制裁はあったようだが。前線では、後方にも敵ありで報復されるので、制裁はないという身も蓋もない話。負傷して、前線では治療不可。死を選ぶ兵士の話。一番の衝撃だったのは、終戦後漸く日本に帰国したのに、親に「死に損なって、今頃帰って来やがって、いっそ死んだほうがましだった」と言われる悲しい現実である。2022/08/15