内容説明
母艦搭乗員として零式観測機を、また、零式水偵を駆って水上機乗りひとすじに歩み、偵察に掩護に、そして爆撃に死闘をかさね、修羅場をくぐりぬけた不屈の男の空戦記。不況と貧困の時代に生をうけ、大空に己れのすべてを賭けざるを得なかった“昭和の申し子”予科練の若者たちの生と死をえがいた感動の墓碑銘。
目次
第1章 大空への願い
第2章 若き海鷲
第3章 母艦搭乗員の気概
第4章 日米開戦の嵐
第5章 愛機は炎とともに
第6章 雌伏勉励のとき
第7章 霧の中の飛翔
第8章 制空権なき空の下
第9章 あゝ終戦
終章 死線を越えて
著者等紹介
藤代護[フジシロマモル]
大正11年5月、茨城県に生まれる。昭和13年6月、第9期乙種飛行予科練習生として横須賀海軍航空隊に入隊。土浦、鈴鹿、博多空をへて、特設水母「相良丸」乗り組み。二座水偵偵察員。マレー、アンダマン攻略戦に参加、負傷により内地帰還。鹿島空偵察教員をへて、19年3月、452空に転勤。千島、台湾で戦闘飛行。20年8月、901空今宿基地で終戦。海軍飛行兵曹長(飛行時間3600時間)。戦後、土建会社をへて家庭裁判所調査官。57年、横浜家裁主任家裁調査官で退職
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
10
「下駄ばき」とはいわゆる水上機のこと。水の上に浮かべるためのフロートを指してそう呼ばれる。主なる用途は偵察だが、作戦に応じて空戦や爆撃も行うことがある。幼い頃から飛行機乗りに憧れ、水上機の偵察員として太平洋戦争に参加した著者の、決して華やかではないもののそれゆえに多くの同期への思いが色濃くにじみ出た一冊である。水上機母艦、相良丸での九死に一生を得た海面墜落、その後は偵察教員として、基地航空隊員として部下にも優しく振る舞ってきた著者の筆致は悪化していく戦況の中にも伸びがある。それだけに戦没同期への言葉が思い2018/06/02
零水亭
1
水上機偵察員だった方の手記。北方部隊配属時の厳しい自然との戦いの記述にも息を呑まれます。ところで、ベテランとはいえ偵察員が零水偵の操縦をして、お咎めはなかったのでしょうか… 尤も、珊瑚海海戦で九七式艦攻の操縦員が戦死したあと、偵察員か電信員が一旦風防出て(?)操縦したような話も聞きますが(結局未帰還になったようですが)。
鈴木誠二
1
下駄ばき水上機スキーにはたまらぬ1冊。濃霧に悩まされる北方の描写や、機上での電探操作の難しさ、紹介任務と、夜間爆撃、夜戦との遭遇。兵士と士官の待遇の差など、実に示唆に富む1冊であった。2014/05/23