内容説明
海の戦いは、つねに一瞬に決まる―。乗員はみずからの生と死を“艦”にゆだね、砲煙の海原に一体となってその任務を全うする。そこには人の運命とおなじく、軍艦それぞれの“運命”があった。太平洋戦史のなかで、ひときわ個性ゆたかに海戦を彩った十二隻の日本艦船の生涯をえがいた感動のノンフィクション。
目次
一瞬の空隙―空母「赤城」ミッドウェーに沈む
主力の犠牲―駆逐艦「時雨」スリガオに単艦行動す
理想の射点―潜水艦「伊一九」米空母を葬る
悲劇の終焉―戦艦「長門」ビキニ実験に消ゆ
窮余の一策―潜水艦「伊四一」ソロモンに活躍す
女王の転身―改造空母「隼鷹」マリアナに奮戦す
戦訓の結実―駆逐艦「早霜」サンゴ礁に死す
驚異の性能―駆逐艦「秋月」比島沖に没す
最後の決断―潜水艦「伊四〇一」ウルシーより帰投す
南溟の雄渾―重巡「羽黒」マラッカ海峡に斃る
栄光の老艦―駆逐艦「神風」幸運なる星の下に
悲運の生涯―戦艦「大和」沖縄特攻に漬ゆ
著者等紹介
佐藤和正[サトウカズマサ]
昭和7年、北海道に生まれる。満州国新京特別市(現在の長春市)で終戦を迎える。日本大学芸術学部を卒業、河出書房入社。昭和37年より文筆活動に入り、ノンフィクションを中心に執筆。平成3年10月歿
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感想・レビュー
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白義
11
駆逐艦秋月や神風、戦艦長門に空母赤城といった特徴的な経歴を持ち太平洋海戦史を彩った艦を十二隻挙げ、その短い略歴を描く軍艦列伝。夕雲型の代表としてこの手の書籍では名前が出ることが少ない駆逐艦早霜なども独立して扱われ、様々な個々の物語から太平洋戦争を振り返ることが出来る。艦隊決戦思想に囚われた旧日本軍の艦隊運用思想の遅れが裏テーマとなっているようだ。印象深いのは進撃中に終戦を迎えた潜水艦伊401の話で、最初は終戦を信じず、やがて乗員自決か、あるいは海賊となり暴れるかという話にまでなる戸惑いが生々しい余韻を残す2016/03/16