内容説明
腹が減ってはいくさはできない。星の数より、めしの数…。新兵、古兵の区別なく、食欲も性欲も旺盛な兵と下士官のものがたり。男の料理・軍隊調理法など軍隊の食生活をあますところなく描いた体験的/帝国陸軍イラスト・エッセイ。兵隊屋敷の四季折々にふれて、分隊長殿が綴った汲めどもつきない兵隊ばなし。
目次
体験的・男の料理/軍隊調理法
兵隊と裁縫
兵隊の手料理
赤鼻の作戦
暗闇の丑松
戦闘食のこと
懐かしき大掃除
カンメンポー
あゝ飯盒めし
俘虜の本能〔ほか〕
著者等紹介
棟田博[ムネタヒロシ]
明治42年11月、岡山県津山に生まれる。早稲田大学文学部国文科中退。陸軍伍長、日華事変中に徐州戦で負傷。太平洋戦争中は陸軍報道班員として南方各地へ従軍。帰還後、「分隊長の手記」を発表。昭和17年、「台児荘」で野間文芸奨励賞受賞。文芸家協会評議員等を歴任。昭和63年4月歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ようはん
22
休日に上官宅の大掃除の手伝いに駆り出されながらも料理の振る舞いがあったり、演習で泊まり先の民家でもてなしを受けたりと果ては上官のいない間に面会に来た妻と兵舎の浴場を借りてあれこれする同僚…等、旧日本陸軍は厳しい軍隊生活ながらも食事面で充実し牧歌的な所があった事が分かる。ただあくまでも日中戦争が始まる前の平和な時期の話で日中戦争で死んだ戦友も多く、著者が報道班員として従軍したインパール作戦や取材したシベリア抑留の話はそうもいかない過酷な話だった。2022/10/03
roatsu
14
敗戦で消え去った日本陸軍の在りし日々・よき日々を体験者の筆で伝える逸話の数々。国民皆兵の世で軍隊が当り前に市民生活の一部として存在し、心身壮健な壮丁であれば誰しもその門をくぐった兵営での生活や悲喜こもごもの出来事を哀歓交えてユーモラスに伝える。伯父や父に聞いた話そのままで、大いに臨場感を持って読んだ。筆者は昭和初めの大戦間という平和な時代に現役兵を経験し、満期除隊後も動乱が激化する中で再度兵役に就くなどして敗戦に至るまで陸軍の軌跡を見届けたある意味最良の証言者の一人であり、本書のエピソードの数々は往時と軍2021/05/21
さいちゃん
14
以前読んだ、「シベリヤ抑留」と重なる部分があり、「飯」というよりも、当時の出来事などが多かった気がします。面白おかしく書いてる部分も多く、読みやすかったです。2015/08/26
高木正雄
4
事変下、明治の乾パンや大正の牛缶が配られたというのに驚いた。お味はどうだったのかしら。作者も昭和初期に明治43年納入の米俵を運んだそうだ。他にも面白かった話はたくさんあるがきりがないので書かないが、ほのぼのする話あり悲しい話あり。下士官と兵、二年兵と初年兵の人情話みたいなのが特に好き2025/05/26
好古
2
【メモ】①大正期の平和な時期は軍隊の方がいい飯が食えた。戦争が始まると粗末になっていった。②中隊対抗の射撃大会があった。癖のない照準通りに飛ぶ銃を「正照準」といった。③「…この戦争は、いつまで続くんじゃろ。」(p130)④「完了(ワンラ)」「没有(メイヨウ)」「没法子(メイファーズ)」など中国語が兵隊の間で使われてたのが興味深い。⑤徴兵検査で即日帰郷になると内心はともかく、表向きはしょげて見せる物らしい。万歳で見送られた手前体裁が悪かった。⑥兵舎にいるといっそ早く戦地に行きたいと思うようになるらしい。2024/08/05