内容説明
軍国戦乱の昭和を背景に、日本陸軍暗号の黎明期から最後の日まで、欧州の戦場をも描きつつ、暗号の作成・解読に命を賭けた苦闘の歩みを追う。独自の世界を築きあげ、いま注目を浴びている気鋭の作家が多くの証言を得て活写する“文字を盗んだ男たち”の戦争。サスペンスとスリルに満ちた異色ドキュメンタリー。
目次
ヤン・コワレフスキー大尉
済南事変
暗号解読班
盗み撮り
蘆溝橋の銃声
開戦前夜
運命の宣戦布告
陸軍数学研究会
葬られた秘密
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nizi
5
要は「陸軍暗号は破られていない」が言いたいことなんだけど、そんなことあるか?2025/07/08
つわぶき
4
帝国陸軍暗号の勃興から敗戦までを、関係者の証言を基に描いた本。無線通信技術が発達する中、その内容を秘匿し或いは解読する為に各国が悪戦苦闘しているが、日本側の様子が見られる本は数少ない。また、中央から各部隊へ乱数式暗号の普及や合成暗号の運用の様相から見えてくる、部隊への徹底の困難性や離島での激烈な戦闘状況における暗号強度維持の工夫は、理論だけでは巧くいかない軍の実情が垣間見える。この様な努力と工夫によって帝国陸軍では、準備と配布のコストが大きいとされる、無限乱数表を用いて強い暗号を維持したのだと感服した。2023/12/30
さ く らだ
0
WW2における連合国側の暗号解読はいろいろ文献が豊富だが、果たして日本側はどうだったのかという素朴な疑問に応えてくれる一冊。陸軍暗号の発達を戦史を交えながら紹介するスタイルは文字数の多さを緩和してくれ、比較的読みやすいと感じた。日本視点で中国やソ連を含めた世界の暗号事情を広く見渡していて、そのあたりの内容も興味深い。しかし、陸軍暗号は解けなかったと占領軍から聞いて喜ぶくだり、なんであっさり信じちゃうんだろうと。いくら勝ったからといって自国の暗号レベルをそんな簡単に言うとは思えないんだがなぁ。2017/10/07
マメラッティ
0
やはり技術は人からと思うに至る。2017/07/06
HIMMEL
0
日本陸軍の暗号、その始まりと終わり。無線電信は登場した当初から第三者から傍受される危険性を孕んでいました。秘匿するためには平文を特別の規則性に従って暗号化せねばならず、その方法は複雑でありかつ複数のパターンを持っている必要があります。暴く側と守る側がしのぎを削る、もう一つの戦場がそこにはあるのです。なまじ暗号を解読したため戦争に突入してしまうこともあれば、暗号を解読されたために敗北へとまっしぐらに突き進んでしまうように、暗号は国家の運命を大きく左右する。ミッドウェー海戦の大敗はまさにその典型例でした。2014/05/29