内容説明
第一次世界大戦で新兵器「潜水艦」の真価を世界に示したドイツ帝国海軍Uボート部隊。4年にわたる戦いを生き抜いた艦長が大西洋の熾烈な潜水艦戦の真実を詳細に綴った戦闘日誌。駆逐艦の攻撃をかいくぐっての洋上船団攻撃、英本土沿岸に潜入しての捕虜救出作戦、商船を装ってUボートを狙う英海軍Qシップとの虚々実々の駆け引き、ドーバー海峡の機雷封鎖線突破行…。「海の狼」の始祖の死闘をこの上なくリアルに描いた海底戦記!
目次
海は運命と法そのもの
アザラシ
潜航障害
北海にて
Uボートの世界
封鎖突破船に対する戦い
人間の疑似餌
U62
Q12を撃沈
擬態
深海からの問いかけ
ドーバー・カレー間の防潜網を突破
船団への襲撃
Uボートの朝
アイルランド海の冬夜
一九一八年
著者等紹介
ハスハーゲン,エルンスト[ハスハーゲン,エルンスト] [Hashagen,Ernst]
1885年8月24日生まれ。1905年4月、ドイツ海軍兵学校入校。第一次世界大戦中にUB21及びU62の艦長として商船54隻と軍艦1隻を撃沈する大戦果を上げたほか、第二次世界大戦中はUボート錬成部隊の指揮官として新生Uボート部隊に貢献。1947年1月12日没
並木均[ナミキヒトシ]
1963年新潟県高田市(現上越市)生まれ。中央大学法学部卒。戦争映画などの字幕。台詞の監修なども手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Miyoshi Hirotaka
15
今でこそドイツを代表する兵器と捉えられているUボートだが、第一次大戦が長期化の様相を呈した時でも日陰者の扱い。海戦での統合的な運用も大規模な建造計画も政治的理由で適時に実行されず、兵器と戦術のミスマッチは現場将兵に多大な犠牲を強いていた。商品の価値が顧客により決められるのと同様、新兵器の価値は敵が決める。Uボートは英国の心胆を寒からしめ、対抗手段のない英国は欺瞞により商船を装いUボートをおびき寄せる戦術を採用。米独関係を悪化させた英籍船ルシタニア号の撃沈は当然の帰結。艦長による海の香が漂う美文の戦闘記録。2024/10/10
dongame6
5
あまり見ない第一次世界大戦のUボート戦記で非常に興味深く読めた。WWW1当時の潜水艦の哨戒任務がどのようなものだったのかを伺い知ることが出来、特にWW2の戦記と合わせて読むことでその共通点や差異を見つけるのも面白いと思う。私としてはWW1当時でも洋上の補給や捕虜奪還の特殊作戦など高度な運用がされていたのに驚いた。また航空機、Qシップ、聴音機など対潜作戦が急激に発達していく過程もよく書かれている。最も興味深い点はこの本がWW2中に発刊された本で、多くの若者がこれを読んで潜水艦乗員を志しただろうという点である2015/08/24
Ted
3
’14年12月刊。○第一次大戦時のUボートの名艦長による回想録。両大戦ともあと一歩のところまでイギリスを追い詰めながらもアメリカの参戦で敗北を喫したドイツの栄光と悲劇。イギリスは潜水艦を当初「紳士に非ざる卑怯な兵器」とか「フェアでない兵器」などと呼んだらしいが、殊更強調するのはイギリスが紳士でも公正でもない疚しさの裏返しだからであろう。終章の結語は「ドイツ」のところを「大和」に置き換えるとそのまま日本にも当てはまる。2023/12/17
とく
2
第一次世界大戦後の戦間期に出版され、第二次大戦中に再販された第一次世界大戦時のドイツUボート艦長の回顧録。戦術的な面もさることながら、『Uボートに乗る心構え』的な記述が多く、要は『ワシの若い頃はこうじゃったんじゃ!』と下の世代に語る系の本です。『海で生きること』について真摯に、熱心に語られた本でもあり、兵器や戦争に興味が無くても、『船乗り』や『海の男』の精神に興味がある人は読んでみると良いと思う。2015/10/31