出版社内容情報
天狗は妖怪か。現代に伝わる鼻高天狗や烏天狗のイメージはどのように形成されたのか。
天狗について語られたさまざまな説話の分析から日本における天狗像の原型を探り出し、古代の「空を飛ぶ悪霊」から、中世の仏教的な魔物としての理解を経て修験と結びつき、さらに江戸時代において娯楽的キャラクターとしても定着していく天狗像の変遷をたどり直す。
従来の説を一新する天狗研究の最前線。
内容説明
天狗は妖怪か。鼻高天狗や烏天狗のイメージはどのように形成されたのか。天狗について語られたさまざまな説話を分析。日本文化史が織りなしてきた変化とパラレルに展開する天狗の文芸史。
目次
序―「天狗」研究から「天狗説話」研究へ
第1章 天狗像の形成(鞍馬天狗;愛宕山太郎坊;天狗像の原型;変化する天狗像;天狗の鼻が高いワケ)
第2章 天狗の中世(彼岸からの声;魔道と天狗;戦乱と天狗;天狗は笑う)
第3章 天狗銘々伝(是害房の冒険;天狗銘々伝)
第4章 天狗の行方(天狗説話の広がり;江戸の天狗論;天狗とは何か 幕末から近代へ)
著者等紹介
久留島元[クルシマハジメ]
1985年生まれ。同志社大学大学院博士後期課程修了、博士(国文学)。現在、京都精華大学特任講師。東アジア恠異学会会員。関西現代俳句協会青年部部長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さとうしん
12
現在流布している天狗像がいかに形成されてきたかを、古代から近代までの天狗説話を辿ることで考察。飛行能力、カラスなど鳥類のイメージ、石つぶて、高い鼻、山伏や修験道の関わりなどが各時代にそれぞれの文脈で付加されてきたことを論じている。また天狗道と西洋の煉獄との比較なども興味深い。天狗説話のうち、中国の天狗が日本に飛来してきて酷い目に遭う是害坊説話については、何やら日本側の歪みというかコンプレックスのようなものが感じられる所ではあるが。2023/12/24
わ!
6
珍しい「天狗」に特化した研究本です。とても真面目な天狗説話の本です。著者が、日本中世文学の研究者と言うことで、天狗説話の「説話」部分に着目して書かれており、とても詳しい天狗の研究本になっています(そもそも天狗の研究本…と言うものが少ないのですけれど…)。最近出版された他の天狗研究本なども、文中で紹介・コメントされており、天狗のことを知りたくて、これから資料を読みたい人は、まずこの本から入ると、かなりショートカットして天狗を学べます。ただしそんな方が、どのくらいおられるか…は気になるところではありますが…。2023/12/19
正坊
1
図書館の本。天狗は元々は凶兆を示す星だったりしたのが、飛行する悪霊や仏道を妨げる魔になり、さらには修験道や山岳信仰と結びついて今のような存在になり、ついには信仰対象にもなってきたという。また、天狗には鞍馬山僧正坊などのように固有名詞があったり、唐からきた天狗の是害坊が日本の仏道を邪魔しようとして散々な目に会う話(絵巻物がある!)など、興味深い話題も多かった。軽い気持ちで借りてみたが、なかなかどうしてハード。けっこう学術的・専門的で読み進めるのに時間がかかった。2024/10/29
orihuzakawagon
1
天狗に対するイメージの変化を説話を通して考察した本。天狗のイメージが鬼太郎の大天狗と烏天狗どまりで、あとは源義経などの歴史物語に出てくるなぁというレベルだったのですが、大変興味深かく読み進めました。2024/08/03
狐狸窟彦兵衛
1
天狗とは何か?時代とともに、概念が変わり、姿も変わっていく「歴史」がわかりやすく解説されています。天狗といえば、鼻が高く、山伏の格好をしているイメージですが、それも決して固定的なものではないことがわかります。面白い本でした。2023/12/28