内容説明
方法としての表象文化史を駆使した明快な天皇(制)論講義。本書は天皇だけではなく天皇の血統のスペアとしての皇族に着眼。中央政界での皇族の姿だけでなく、津軽、宮城、秩父など地域社会における表象に中央の規範からの逸脱を指摘。さらに法維持暴力(ベンヤミン)の視点から、幕末から戦前、戦中、戦後を経て、平成のサブカルチャーまで、メディアにおける天皇・皇族表象を読み解き、表象の集積体としての天皇(制)に迫る。
目次
序章 表象の集積体としての天皇(制)―方法と視座
第1章 天皇像の近世・近代・戦後
第2章 近代天皇像の形成と維持
第3章 行幸啓・「御成」という契機
第4章 “御真影”という装置
第5章 検閲というシステム
第6章 大衆社会とメディア消費―戦前戦中期メディアのなかの皇族表象
第7章 僻地と国民国家―戦前期秩父における秩父宮の表象
第8章 危機と奇跡―天皇・皇族の「瑞祥」言説
第9章 “人間天皇”とその周辺―戦後皇族表象の連続性
第10章 弱者と超越性―現代における天皇(制)表象
著者等紹介
茂木謙之介[モテギケンノスケ]
1985年、埼玉県生まれ。2009年東北大学文学部卒業。2011年東北大学大学院文学研究科博士前期二年の課程を修了。2016年東京大学大学院総合文化研究科博士課程を修了。博士(学術)。日本学術振興会特別研究員を経て、2018年より足利大学工学部講師。専攻は日本近代文化史・表象文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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秋津
4
言わば「スター性」(第六章)があり、産業、スポーツ顕彰などの役割を持つ皇族、秩父における秩父宮崇敬に見られる「僻地」における天皇(制)、「天皇の『皇族化』」(第九章)ともいうべき現象を経て生まれた「人間天皇」など、皇族、マスコミ、地域住民など、様々なアクターの表象・受容に係る考察は、「天皇(皇族)」「権威」といった単発的な見方だけでは分からない天皇(制)という問題を考える上で得るところが大きい。写真の構成や構図の考察、ジェンダーの問題など、知識不足で理解できない箇所はあったが、全体として大変読みやすい。2019/12/21