出版社内容情報
近代日本の公娼制は国際的も国内的にも一貫して問題だった。その政治過程を明らかにし、当時の社会と格闘した女性たちを活写する。日本(大日本帝国)では、「公娼制度」は、始めから終わりまで一貫して問題だった。なぜなら、列強率いる国際社会で、「人身売買」は文明国にはあってはならないものだったからである。江戸時代から引き継いだ「身売り」を制度化した公娼制は、国際社会からの批判、国内の公娼制反対の運動、帝国議会での公娼制度廃止法案審議の大論争などを巻き起こした。
本書前半は、国際情勢・政局との関係、国内の廃娼運動、帝国議会での審議の大論争など、埋れてきた公娼制の政治過程を明らかにする。これらの動きは一方で、近代日本における、公娼制と縁を切った「新しい男」をめぐる辛抱強い攻防でもあった。
後半は、公娼制が当たり前であった時代に、「娼妾の全廃」を掲げ活動したクリスチャンの佐々城豊寿、自ら壇上に上がり女子の教育を訴えた岸田(中島)俊子、廃娼を訴え同時に女性の労働問題を重視した山川菊栄の姿を描き、彼女らのそれぞれの活動が歴史のなかでどのように重なり展開していったのかを浮き彫りにする。
第一章 近代日本における公娼制の政治過程──「新しい男」をめぐる攻防
第二章 雌鳥よ、夜明けを告げるな──佐々城豊寿と初期廃娼運動が直面した困難
第三章 湘煙とその時代──岸田俊子の実像を探る
第四章 山川菊栄と「公娼全廃」──『おんな二代の記』を中心に
関口すみ子[セキグチスミコ]
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。法政大学元教授、専攻、ジェンダー史・思想史。
著書に、『御一新とジェンダー──荻生徂徠から教育勅語まで』(東京大学出版会、サントリー学芸賞〔2005年〕受賞)、『大江戸の姫さま──ペットからお輿入れまで』(角川選書)、『国民道徳とジェンダー──福沢諭吉・井上哲次郎・和辻哲郎』(東京大学出版会)、『管野スガ再考──婦人矯風会から大逆事件へ』(白澤社)、『良妻賢母主義から外れた人々──湘煙・らいてう・漱石』(みすず書房)など。
内容説明
近代日本ではなぜ「公娼」が容認されてきたのか?彼らは公娼制とどう闘ったのか?公娼制をめぐる政治的攻防を追跡し、近代日本政治史の書き換えを迫る挑戦の書。
目次
第1章 近代日本における公娼制の政治過程―「新しい男」をめぐる攻防(近代日本と公娼制―「身売り」の存続と近代化;「文明国」と「人身売買」 ほか)
第2章 雌鳥よ、夜明けを告げるな―佐々城豊寿と初期廃娼運動が直面した困難(馬に乗る女;「東京婦人矯風会」の旗揚げ ほか)
第3章 湘煙とその時代―岸田俊子の実像を探る(「女丈夫」の登場;「湘烟女史岸田俊子(二十年)」という仕掛け ほか)
第4章 山川菊栄と「公娼全廃」―『おんな二代の記』を中心に(新聞を読んでいた子ども―時代を証言する;当事者として証言する)
著者等紹介
関口すみ子[セキグチスミコ]
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。法政大学元教授、専攻、ジェンダー史・思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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