内容説明
後妻の娘にとり憑いた累(かさね)の怨霊は、自分を殺した夫の悪事を告発し、犯罪を見過ごしてきた村落を震えあがらせた。前代未聞の死霊憑依事件に挑んだ僧・祐天。近世初期の農村で実際に起きた死霊と人間とのドラマがここによみがえる。
目次
死霊解脱物語聞書 上(累が最後之事;累が怨霊来て菊に入替る事;羽生村名主年寄累が霊に対し問答の事;菊本服して冥途物語の事;累が霊魂再来して菊に取付事;羽生村の者とも親兄弟の後生をたつぬる事)
死霊解脱物語聞書 下(累が霊亦来る事附名主後悔之事;祐天和尚累を勧化し給ふ事;菊人々の憐を蒙る事;石仏開眼の事;顕誉上人助か霊魂を弔給ふ事;菊が剃髪停止の事)
著者等紹介
小二田誠二[コニタセイジ]
1961年生まれ。静岡大学人文社会科学部教授。専攻は日本言語文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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八子@ちょっと復活
10
なんだこれ……面白いぞ。本文は難しくて読み飛ばしたけど、現代語訳がついているので安心して物語についていける。与右衛門の娘、菊に取りついた先妻の累。自分の為にワガママ言って菊ちゃんを苦しめる累さんは、でも何故か憎めないです。死語の世界について詳しく語ってくれたり、言いくるめられると「小難しい理屈なんて知ったことか!」と開き直ったり、愛嬌があるのか?原文にも挑戦したい。2012/10/07
早乙女まぶた
5
容貌の醜いうえに意固地な性格の塁(かさね)という女が夫に殺されてしまい、その幽霊が腹違いの娘にとり憑き、村の人間を前にしてべらべらとしゃべる話。幽霊がべらべらしゃべるからなのか、幽霊に恐れ戦く描写がないからなのか、ぜんぜん怖くない。むしろ塁が死んだ時の話の方がよっぽど怖ろしいし悲劇的だ。これが江戸時代最も有名な怪談だったらしい。たしかに面白い。現代語訳がついていて話の内容を追うだけならそっちの方が読みやすいが、原文の言葉遣いが面白いので原文の方が魅力的。2013/10/02
なかむら
2
やっと読んだ。面白い!原文が普通に読み物として面白いぞ累ヶ淵! 調べ物のつもりで読んだのに! 怪談大好きオカ板住人だったので、ああ専門職(お坊さん神主さん拝み屋さん)が介入して真相が判明するタイプの実話怪談って江戸時代に完璧に成立してるんじゃん、という意味で感動まで沸き起こる。信憑性を持たせる手法もパーフェクト。累のキャラクターもいい塩梅。2017/03/04
kazahana*
1
江戸時代に有名だった怨霊憑依事件のルポルタージュ、『死霊解脱物語聞書』。落語『真景累ヶ淵』もこの怪談がモチーフになっている。本書は、この『聞書』の原文、注釈、現代語訳、そしてさらに大学教授による解説まで網羅したてんこ盛りな一冊。『聞書』そのものがまずドラマチックで、おもしろい! 読みやすいしおすすめ。2018/10/08
BrandyIron
1
某音楽バンドで累を取上げた曲があったため原典を学んでみようと思い読みました。なるほど聞書(ききがき)ということで、ルポタージュ風になっているため、読み物というよりは事象をなぞる感じでした。祐天や仏教の内容がよく出てきますが、一番の被害者である助や累について、もっと掘り下げてあげたなら、、、と思いました。(;´Д`)2014/10/12