内容説明
禁酒法時代、カリフォルニア・ワインを守った一人のサムライがいた。幕末、13歳にして海を渡り、「ブドウ王」と讃えられるまでの軌跡を、徹底した取材をもとに書き下ろしたドキュメンタリー・ノベル。
目次
序章 バロン・ナガサワ
第1章 密航
第2章 英京ロンドン
第3章 アバディーンの憂鬱
第4章 新生兄弟社
第5章 十九歳の決断
第6章 カリフォルニアの大地
第7章 ブドウ王への道
第8章 花相似たり
第9章 ブドウ王、最後の闘い
第10章 落日
著者等紹介
多胡吉郎[タゴキチロウ]
作家。1956年、東京生まれ。1980年、NHKに入局、ディレクター、プロデューサーとして多くの番組を手がける。ロンドン勤務を最後に2002年に独立、イギリスにて文筆の道に入る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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クサバナリスト
9
NHK『知恵泉』にて長沢鼎の放送をした際に著者も出演していたので読了。TVでは、長沢鼎が独力でカリフォルニアワインの礎を築いたような説明で教団のことにはふれていなかった気がする。資金を自分で工面していないことや宗教に関連していることが、日本で知名度が低い要因がする。ただ、これらの点を除いてもこの時代に異国の地でワイン王と呼ばれるまでになったことは、幕末史のエピソ-ドのひとつ、アメリカ地理学習のひとつとしてもっと知られていてもよいと思う。 2015/07/13
HIRO1970
8
★☆★まさにラストサムライでした。長沢鼎は13歳で才気活発を見込まれ、薩摩から国禁の海外渡航をし英国へ、当時はスエズ運河すらまだ無い時代。艱難辛苦を経て15歳で今度はアメリカ東部の新興宗教コミューンへ、当時のゴーウエストの流れとの無縁ではないと思いますが、教団の資金源であるブドウ栽培で良質なワインを作る為に23歳でコミューンとともにカリフォルニアへ、ブドウの世界的な病気蔓延、日系人排斥法、禁酒法時代等の問題と戦う様とともに、武士道とも言える凛とした涼風のような決断の数々を描ききった傑作と言える一代記です。2013/10/20
Jurisa_kt
4
カリフォルニアワインの礎としてワインの改良を重ねワイン王と呼ばれていたことや、森有礼との繋がり、当時の日本人移民の置かれた状況など知らないことばかりでした。アメリカに骨を埋める覚悟を決めてからは特に迷いがなく、甥の嫁として日本から嫁いだおヒロさんも日本から離れているからこそ日本人として恥じることなく生きていく様が良かったです。2014/09/03