出版社内容情報
障害のある女性48名の生活史から、「障害があり女性である人たち」を生きづらくさせている社会構造や差別について、深く考察した一冊。障害者について論じられるときには、性差別のせいで女性の声がかき消され、女性について論じられるときには障害者差別のせいで障害女性の声はかき消されるという状況がある。しかし、障害のある女性が受ける差別の実態を明らかにする試みはいまだ途上にあり、複雑に絡み合う問題を把握するためのデータは圧倒的に不足している。本書は、この不足を埋めることを試みるものである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
川越読書旅団
22
障害を持つ女性の生の声がビビッドに伝わる非常に学びの多いレポート。「障害者について論じられるときには、障害のある女性の声は取り上げられず、もしくは障害者の経験として女性という面は切り捨てられる一方で、女性について論じられるときには、障害のある女性の経験が置き去りにされる。」まさに障害を持つ女性界隈はこの一言に尽きるのでは。2024/02/23
てくてく
7
DV問題に関する本の中で、被害女性の中で障害者や外国人、被差別部落出身者である場合は声があげづらいことを読んだが、それを思い出させる書籍であった。他の人も指摘しているように障害者について語る時は女性が見えなくなり、女性について語る時は障害者が見えなくなってしまう傾向がある問題、同性介護の必要性、視覚障害者に対する職業選択(三療)への圧力やその職業に関する性犯罪リスク、強制的不妊手術や生理の問題など、語ることができづらかった論点を指摘しており、勉強になった。2024/03/25
えりー
4
障害のある方々が通う学校や施設で、「性教育」がちゃんとされていないことと(日本は全体的にも性教育が世界に比べて遅れてると個人的に思いますが。)性暴力被害も現実にはあること。(健常者と障害者ともにだが) 障害のある方々のほうが、自分の身を守ることが難しいのと現実的に性暴力被害にあった場合、どこまで具体的に支援を受けられるのかが不透明であること。(これは健常者にもあてはまると思うが)女性だから、障害があるからと区別するのは文章では簡単だが、現実は難しい。2023/11/30
り
3
◎2024/03/27
Y.Yokota
3
まさに書名のことについて、当事者へのインタビュー、障害とジェンダーにまつわる研究や考察など交えながら、さまざまな課題を提示している。2023年7月の刑法改正やインターセクショナリティ、SRHRなどの近年のトピックにも触れ、この1冊で広い範囲の情報をカバーできる。自分は男性ながら生きづらさという観点から女性にまつわる本をよく読む。しかしそれもこの本にあるように、男性に触れられたくない部分もあるのかも知れない。正解は分からないけど、日々自問自答はしていこうと思う。2023/11/13