出版社内容情報
障害のある女性48名の生活史から、「障害があり女性である人たち」を生きづらくさせている社会構造や差別について、深く考察した一冊。障害者について論じられるときには、性差別のせいで女性の声がかき消され、女性について論じられるときには障害者差別のせいで障害女性の声はかき消されるという状況がある。しかし、障害のある女性が受ける差別の実態を明らかにする試みはいまだ途上にあり、複雑に絡み合う問題を把握するためのデータは圧倒的に不足している。本書は、この不足を埋めることを試みるものである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
76
障害があり女性であることの生きづらさに焦点を当てたジェンダー本。恋愛・結婚・出産、性暴力被害、障害当事者運動、そこで語られ、問い返され、重ねられてきた当事者の経験。「性差別や人種差別などを個別の問題として扱うのではなく、交差し合うものとして捉える視点」のインターセクショナリティ。「差」としての集団とカテゴリー、「別」としての貶めと扱い、「交」としての重なりとそれがもたらす事態。これを障害があり女性であることでとらえると、生きづらさが見えてくる。2024/06/25
川越読書旅団
23
障害を持つ女性の生の声がビビッドに伝わる非常に学びの多いレポート。「障害者について論じられるときには、障害のある女性の声は取り上げられず、もしくは障害者の経験として女性という面は切り捨てられる一方で、女性について論じられるときには、障害のある女性の経験が置き去りにされる。」まさに障害を持つ女性界隈はこの一言に尽きるのでは。2024/02/23
てくてく
9
DV問題に関する本の中で、被害女性の中で障害者や外国人、被差別部落出身者である場合は声があげづらいことを読んだが、それを思い出させる書籍であった。他の人も指摘しているように障害者について語る時は女性が見えなくなり、女性について語る時は障害者が見えなくなってしまう傾向がある問題、同性介護の必要性、視覚障害者に対する職業選択(三療)への圧力やその職業に関する性犯罪リスク、強制的不妊手術や生理の問題など、語ることができづらかった論点を指摘しており、勉強になった。2024/03/25
wakazukuri
4
障害者差別、女性差別、どちらを取れと言って取られない。その両面からの生きづらさ。健常者でさえ男女差別があるが、障害者はもっと顕著に差別されているという。腹立たしくなる。意義のある聞き取り調査であるが、途中専門家の説明について行けない面もあった。研究者が中部に多いので聞き取りも中部の偏っている感もあるし、アンケート調査が少ない感もある。今後も継続されることを期待しています。2024/05/24
えりー
4
障害のある方々が通う学校や施設で、「性教育」がちゃんとされていないことと(日本は全体的にも性教育が世界に比べて遅れてると個人的に思いますが。)性暴力被害も現実にはあること。(健常者と障害者ともにだが) 障害のある方々のほうが、自分の身を守ることが難しいのと現実的に性暴力被害にあった場合、どこまで具体的に支援を受けられるのかが不透明であること。(これは健常者にもあてはまると思うが)女性だから、障害があるからと区別するのは文章では簡単だが、現実は難しい。2023/11/30