出版社内容情報
障害者に「傷痕」を与えてきた優生思想の歴史を、いま、福祉現場はどう問い直すことができるのか。社会福祉本来の役割である「個人の幸福の保障」を取り戻すために、戦前・後の障害者福祉政策の歴史を専門とする著者が、現場と同じ目線にたって丁寧にひも解く一冊。
福祉の面白さを伝え、現場実践を変える「現代書館ソーシャルワークシリーズ」4作目。
内容説明
社会福祉が過去の誤りと向き合うために、あの事件を「絶対にあってはならなかった」と心から言えるように「役立たず」がつくられた歴史を解説する、支援者のための入門書。
目次
第1章 狭い現場から少し距離をとって見つめ直す
第2章 「隠さない」実践
第3章 入所施設と向き合う
第4章 反「スケープゴート」の実践
第5章 「役立たず」の論理を問う
第6章 戦争にとっての「役立たず」
第7章 「役立たず」のルーツを問う
第8章 「普通」ってなんだろう?
おわりに 「傷痕の歴史」について
著者等紹介
藤井渉[フジイワタル]
日本福祉大学社会福祉学部准教授。博士(人間福祉学)。社会福祉士。花園大学社会福祉学部専任講師、同准教授を経て、2020年4月より現職。専門領域は障害者福祉論。研究テーマは戦争と障害者、障害者福祉政策など。医学史研究会幹事、NPO法人ディフェンス理事、社会福祉法人ぬくもり評議員、大阪精神医療人権センター面会スタッフなど(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ryo
12
良書だった!歴史から紐解く障害者差別、優生思想の話。知らないことばかりだった。2024/06/16
てくてく
10
SNSで話題になっていて購読。2016年に発生した神奈川県「津久井やまゆり園」の殺害事件に関するもやもや感、何とも言えない居心地の悪さなどを、近代以降の優生学の言説などを紹介しつつ、障害者を役に立たないと排除し、犯罪リスクの観点などから施設に隔離しつづけたこと、施設を使用する障害者の意思がなかったかのように取り扱われることの怖さなどを考える話題を提供している。人をモノ扱いし、人を邪険に扱っても構わないものと思ってしまい、それが許されるような環境の、何かあれば一線を越えてしまう危うさに暗澹たる気持ちになる。2022/05/27
もてぃ
4
歴史的な視点から社会福祉を俯瞰し、障害者差別を問い直す一冊。現在で当たり前のようにとらえられている基準や常識にも、それが形成されてきた歴史がある。背景を知り、当たり前だと思っていた概念の全体像を掴むことでその概念を批判的に問い直すことができるようになる。歴史を学ぶことの意味はきっとそこにあるのではないかと思わされた2024/08/23
NATSUMI
2
障害があっても就労すべき!と思っていた、、、。就労支援A→Bの優劣をつけていたなぁ、と反省。本人が真ん中にある支援を!2023/06/18
オラフシンドローム
1
★★★★☆ 障害者の避妊手術について、私は自分のことを是認派だと思っていたけれど、個別にはそうとも言い切れないかもしれない。だからこそ、障害者は匿名ではいけないのだと思う。 一方で、仕事なく生活を保障され、抑制が効かない障害者も沢山見てきたから、全てを権利として認めてしまうと日本経済が破綻するとは思う。権利を主張するなら、義務も生じる。保護を受給する人たちにも、受給し続けるために果たさなくてはならない義務があるべきだと思う。他者のためへの貢献も。 そして我々には、福祉と共に、他者への福祉の心が必要だ。2023/02/19