出版社内容情報
・小泉悠氏(東京大学 准教授)推薦!!
・ウクライナ戦争へとプーチンを突き動かすロシアの歴史認識とは。
・膨大な資料から、緊迫化するロシア情勢の背後で繰り広げられる歴史認識論争の実態を明らかにする。
「大祖国戦争史観」――それは、ソ連がナチス・ドイツを撃破したことで欧州を「解放」したという独ソ戦(大祖国戦争)での勝利を称える現代ロシアの歴史認識。しかしながら、欧州の目に映るそれは、「独裁体制」による「新たな占領」に他ならなかった。
続々と異を唱える欧州諸国をまえに、現代ロシアの歴史認識論争は、二国間から多国間へ、さらには舞台を国際機関へと移し、グローバルに展開されてゆく。
プーチン政権はいかにして「大祖国戦争史観」の正当化・喧伝を図っているのか。そしてそれは、「非ナチ化」を掲げてはじまったロシア・ウクライナ戦争にどう結びついているのか。本書は、膨大な資料をひも解くことで、その実態・ダイナミズムを明らかにする。
――小泉悠氏による推薦文全文――
戦勝の記憶がプーチンを突き動かす
ウクライナ戦争を正当化するロシアの歴史認識とは
膨大な資料を縦横無尽に駆使し、
協調と対立のダイナミズムを解き明かす
若手研究者による渾身の一冊
【目次】
序章
ウクライナの「非ナチ化」とは何か / 「記憶の戦争」 / 先行研究と本書の課題 / 本書の構成
第一章 大祖国戦争の記憶
プーチン政権の歴史認識 / 記憶の利用
第二章 顕在化する歴史認識論争
退役軍人をめぐる対立 / 記念碑をめぐる対立 / 欧州国際機関の異議申立て / 基本方針の策定
第三章 国連での活動
ナチズムの復権?/ 活動開始 / 舞台は国連総会へ / 割れる結論
第四章 「共通の記憶」としての戦勝
旧ソ連諸国へのまなざし / CIS諸国における戦勝の意味 / 「共通の記憶」の演出 / 先鋭化する対立
第五章 第三国との協力
ロシア・ドイツ関係現代史共同研究委員会 / イスラエルへの接近 / 中国への接近
補論 交錯する日中ロの戦勝八〇年
可視化される対日歴史認識 /グローバル化する歴史認識論争
第六章 パンフィーロフの二八人
メディンスキ―・ミロネンコ論争 / 「大祖国戦争史観」の死守 / 異論の封じ込め
第七章 よみがえるスターリン
割れるスターリン評価 / 共産党の歴史認識 / 共産党の活発化 / 「歴史歪曲」への対抗 / 共産党と退役軍人
第八章 法律が統べる歴史解釈
法改正の推進 / 憲法改正 / 罰則と規制の強化
終章
プーチン政権にとっての戦勝の記憶 / ロシア・ウクライナ戦争への記憶の動員 / 「ジェノサイド」/ 歴史認識論争の継続・拡大
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