出版社内容情報
▼「あさが来た」のモデルになった豪商廣岡家。彼らが活躍した江戸時代から昭和までの波乱の歴史をたどる。
▼現代金融取引の先駆でもあった大坂豪商の様々な役割を現代的な視点と一次史料の精査によって明らかにする!
世界初の先物取引市場であった大坂堂島米市場は、その重要な役割を社会的な影響をもつ商人(=豪商)が担った。
現代の金融技術にも比するイノベーティブな手法を駆使し、大名を相手に大商いをする姿を廣岡家文書から追う。
内容説明
商人が動かす経済・文化・歴史。大坂の豪商=廣岡家の史料が語る、江戸時代から明治、昭和に渡る波乱万丈の物語。
目次
プロローグ 豪商の大坂
第1章 大坂金融市場の形成―米市場の誕生と加島屋の創業
第2章 堂島米市場の誕生―デリバティブ取引の活況と加久の躍進
第3章 大名貸の展開―豪商はいかにリスクをコントロールしたか
第4章 廣岡家の明治維新―時代の転換と豪商の危機対応
第5章 昭和金融恐慌の打撃―加島銀行の終焉
第6章 新しい金融事業への参入―大同生命保険会社の設立
エピローグ
著者等紹介
高槻泰郎[タカツキヤスオ]
神戸大学経済経営研究所准教授。東京大学大学院経済学研究科後期博士課程修了。博士(経済学)東京大学。専門は日本経済史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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石油監査人
34
題名中の廣岡家とは、江戸時代から昭和初期まで続いた大阪の豪商で、現在の大同生命保険の創業家でもあります。この本は、2010年代に大量発見された同家の古文書の学術的調査の結果に基づいて書かれていて、ここには、大坂堂島米市場の形成を契機に始まった日本の金融市場の発達が、廣岡家の栄枯盛衰の歴史と重なり合いながら、生き生きと描かれています。特に、廣岡家の主力事業であった大名貸しと呼ばれる全国各地の藩への融資では与信分散や信用調査、財務アドバイスなど高度なリスク管理と金融サービスが実施されていた点に驚かされました。2025/02/16
ゲオルギオ・ハーン
30
江戸時代の大阪の豪商廣岡家をモデルケースに江戸時代の金融システムと明治時代になって金融がどのように変わったのかを研究・考察した一冊。一般向けを意識して書かれており、読みやすく、用語の説明や息抜きのコラムも充実している。肝心の本題も興味深い。特に大阪が江戸時代の金融の中心になったかが、物流の中心であるため、担保をとりやすいこと『大阪法』により債権者が(他の地域よりも)保護されていたこと、現金ではなく手形取引がメインになっていたことを挙げて説明している。米市場の取引も図付きで説明しているので大変分かりやすい。2022/08/17
koji
15
この書は、高槻先生をはじめ編著者のたいへんな労作です。40年近く金融業に従事していたこともあり、江戸時代から明治・昭和に至る大阪の豪商の栄枯盛衰にはまるで推理小説を読んでいるような興奮を覚えました。さて著者の問題提起(p292)<なぜ江戸期に大名貸で隆盛を誇った広岡家は昭和期に銀行破綻に追い込まれたか。>に感想を書いてレビューとします。一言で言えばリスク分散、付利を追わない、実務だけでなく金融哲学を考察する家訓の存在と伝承がどうであったかではないか。これはバブル崩壊、金融危機を経験した実務家視点の感想です2024/01/17
TheWho
14
江戸期に鴻池や三井に匹敵する豪商であった加島屋(廣岡家)の公開された廣岡家文書を基に江戸時代から明治維、昭和恐慌を経た豪商の金融史を克明に物語る一冊。特に印象深かったのは、生産性が向上しつつある江戸期に貨幣の量が追いつかずデフレ状態を大阪商人は、米切手や手形取引でいち早く管理通貨制度を民間レベルで実施していた点であった。そして、それが米本位制に繋がり、飢饉発生時の対応ができなかった事に気付かされた。改めて金融・経済から歴史を観る重要性を気づかされた一冊です。2023/04/05
フク
12
#読了 大同生命を設立した豪商・廣岡家の記録から近世〜近代の金融史を辿る。 江戸時代の大名家ですら経済観念がアウトなのは驚いた。 読み友さんから拝借2022/09/30