出版社内容情報
グレアム・グリーンの映画的側面に光をあて、映画作家とのかかわりからグリーンを〈遅れてきたモダニスト〉として捉えなおす。小説家と映画の終わらない「情事」――
文学史と映画史を交差させながら、シネフィルで映画批評家だった小説家の創造の軌跡をよみがえらせる。
『スタンブール特急』『ブライトン・ロック』『第三の男』『情事の終わり』――映画批評家としても活躍した小説家グレアム・グリーン(1904-1991)の映画的側面に光をあて、ヒッチコック、チャップリン、ルネ・クレール、フリッツ・ラングなど、同時代の映画作家とのかかわりからグリーンを〈遅れてきたモダニスト〉として捉えなおす。
文学と映画の橋渡しをする、野心的試み。
プロローグ
<b>第一部 トーキーの夜明け</b>
第一章 ミドルブラウのアダプテーション空間
――『スタンブール特急』と『オリエント急行殺人事件』
1 一九三〇年代初頭のミドルブラウ文化
2 嫌々ながらのミドルブラウ作家
3 アダプテーションとアプロプリエーション
4 グリーンの動くホテル
5 鉄道、映画、モダニティ
6 ロシアより愛をこめて
7 列車の停止
第二章 風刺としての資本主義批判
――『ここは戦場だ』と『自由を我等に』
1 モダニズムの余白に
2 日常生活と出来事の弁証法
3 モダニズムにおける映画的技法
4 ヒッチコックの影、あるいは視覚的な無意識について
5 二つの初期トーキー映画
6 コメディの巨匠たち
7 機械の時代の風刺劇
<b>第二部 ジャンルの法則</b>
第三章 メロドラマ的想像力とは何か
――『拳銃売ります』と『三十九夜』
1 「エンターテインメント」とは何か
2 イギリス時代のヒッチコック
3 サスペンス、あるいはメロドラマの表層的位相
4 メロドラマ的想像力
5 スクリューボール・コメディの影
6 二つのスクリューボール・コメディ
7 平等性のコメディ
8 ジャンルの法則、あるいは初夜について
9 メロドラマの深層
第四章 聖と俗の弁証法
――『ブライトン・ロック』と『望郷』
1 カトリック小説とは何か
2 宗教と道徳の弁証法
3 世俗の逆襲
4 生と死の哲学
5 サスペンスとしての恩寵
6 三つの映画
7 フランスの詩的なリアリズム
<b>第三部 映画の彼方へ</b>
第五章 プロパガンダへの抵抗
――『恐怖省』と『マン・ハント』
1 グリーンの「神経戦」
2 ラングとグリーン、あるいは二つの『恐怖省』
3 反ナチス映画
4 「敵」の表象
5 だまし絵のヴィジョン
第六章 男たちの絆
――『第三の男』と『ヴァージニアン』
1 偽装するモダニズム
2 二つの『第三の男』
3 ダブルの増殖
4 ホモソーシャルとは何か
5 フロイトのパラノイア理論
6 西部劇への偏愛
7 西部劇としての『第三の男』
8 ジャンルの法則、あるいは救済の原理について
9 暴力の原風景
エピローグ
あとがき
グレアム・グリーン年譜
初出一覧
参考文献
索引
佐藤 元状[サトウ モトノリ]
著・文・その他
内容説明
『スタンブール特急』『ブライトン・ロック』『第三の男』『情事の終わり』―映画批評家としても活躍した小説家グレアム・グリーン(1904‐1991)の映画的側面に光をあて、ヒッチコック、チャップリン、ルネ・クレール、フリッツ・ラングなど、同時代の映画作家とのかかわりからグリーンを“遅れてきたモダニスト”として捉えなおす。
目次
第1部 トーキーの夜明け(ミドルブラウのアダプテーション空間―『スタンブール特急』と『オリエント急行殺人事件』;風刺としての資本主義批判―『ここは戦場だ』と『自由を我等に』)
第2部 ジャンルの法則(メロドラマ的想像力とは何か―『拳銃売ります』と『三十九夜』;聖と俗の弁証法―『ブライトン・ロック』と『望郷』)
第3部 映画の彼方へ(プロパガンダへの抵抗―『恐怖省』と『マン・ハント』;男たちの絆―『第三の男』と『ヴァージニアン』)
著者等紹介
佐藤元状[サトウモトノリ]
1975年生まれ。慶應義塾大学法学部教授。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程単位取得退学。博士(学術)。専門は英文学と映画研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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