出版社内容情報
本書は数理経済学の重要なトピックを効用理論と意思決定、社会数学の伝統、動学と均衡理論という3つのテーマにより横断的に論じる。
▼経済分析に妥協のない論理を貫く数理経済学
その伝統と現代経済学への展開を描く
数理経済学の目的は、経済主体の合理的な経済行動とは何か、経済活動の社会的な集計による相互連関やその帰結はどのようなものになるか、の二つを明らかにすることといえる。しかし、その定式化にあたっては、経済社会をどのように捉え、その背後の人間の特性をいかに描写するかといった、研究者の人間観・社会観に関する様々な論争も引き起こされてきた。
本書は、効用理論と意志決定、社会数学の伝統、および動学と均衡理論という3つのテーマによって、数理経済学の歴史的発展を振り返り、複雑に変容する社会に挑む最先端の研究成果を示す。
序文
<b>第1部 効用理論と意思決定</b>
第1章 効用理論の学説史
―― ParetoとSamuelsonについての覚書(須田伸一)
第1節 はじめに
第2節 Paretoと積分可能性問題
第3節 Samuelsonと顕示選好理論
第4節 おわりに
第2章 効用理論の新展開(細矢裕誉)
第1節 はじめに
第2節 効用理論の論点
1 どんな好みならば効用で表せるのか
2 どうやって実際に効用を測るのか
3 効用理論は妥当か否か
4 効用は比較できるか否か
第3節 積分可能性について
1 古典的な結果
2 Hurwicz-Uzawa理論
3 筆者の結果
4 もうひとつの方向性
第4節 効用理論の未来
第3章 曖昧さとシグナリング・ゲーム(尾崎裕之)
第1節 はじめに
第2節 曖昧さを伴う不完全情報展開形ゲーム
1 フレームワーク
2 均衡概念の拡張
第3節 曖昧さを伴うシグナリング・ゲーム
1 モデル
2 逐次均衡
3 一括均衡
4 分離均衡
5 Cho-Krepsによる均衡選択
第4節 おわりに
<b>第2部 社会数学の伝統と経済理論の潮流</b>
第4章 「社会数学」の学統と数理経済学の誕生(武藤功)
第1節 はじめに
第2節 数理経済学への批判
第3節 Condorcet の「社会数学」の構想
第4節 Cournot の方法論
1 大量現象としての規則性
2 集計による円滑化効果
第5節 Cournot からWalras へ
第6節 おわりに
第5章 自由貿易均衡と不等価交換(金子創)
第1節 はじめに
第2節 準備および問題の概観
1 Perron-Frobenius定理
2 国際的不等価交換論
第3節 代替的なHeckscher-Ohlin モデル
1 経済
2 均衡
第4節 不等価交換としての労働搾取
1 搾取の定式化
2 搾取を伴う均衡の存在と特徴付け
第5節 おわりに
第6章 社会的選択理論の基礎(佐藤伸)
第1節 はじめに
第2節 記法と定義
第3節 定理
1 Arrowの定理
2 Senの定理
3 Gibbard-Satterthwaiteの定理
第4節 証明
1 Arrowの定理の証明
2 Senの定理の証明
3 Gibbard-Satterthwaiteの定理の証明
第5節 無関連対象からの独立性
1 正当化
2 限定反応性
第6節 耐戦略性
1 耐戦略性に特有の事情
2 小さな嘘
第7節 おわりに
第7章 価格決定・資源配分機構としてのオークションの理論(花薗誠)
第1節 はじめに
第2節 オークションモデルの設定と類型
第3節 対称独立私的価値のモデル
1 封印一位価格入札
2 封印二位価格入札
3 期待収入等価(Revenue Equivalence)
4 表明原理と期待収入等価定理
5 リスク回避的な入札者
第4節 調達入札とスコアリングオークション
1 スコアリングオークションの考え方
2 準線形の評価ツール
3 価格性能比による評価ルール
4 その他のケース
第5節 おわりに
第8章 協力ゲームにおけるNTU値の公理論的関係(虞朝聞)
第1節 はじめに
第2節 準備
1 数学的記法
2 NTUゲーム
3 NTU値
第3節 結果
1 公理
2 NTU値の特徴付け
3 公理の独立性
第4節 おわりに
第9章 がん保険の数理(友寄一郎)
第1節 はじめに
1 がん保険商品の現状
2 がん統計の現状
第2節 がん保険商品の分類
1 タイプ1(1回払い継続)
2 タイプ2(1回払い消滅)
3 タイプ3(複数再発払い)
4 タイプ4(複数継続払い)
第3節 モデルの導入
第4節 数理モデル
1 マルコフモデルの基礎
2 がん保険のタイプ別基礎率
第5節 モデルの実装
1 がん有病率の導出
2 死力の導出
3 回復力の導出
4 がん罹患力の導出
5 支払インターバルの修正
6 マスター方程式の数値解
第6節 おわりに
第10章 一様大数法則とその応用について(田中久稔)
第1節 はじめに
第2節 一様大数法則と計量経済学
第3節 Glivenko-Cantelli の定理
第4節 対称化・鎖状化・集中不等式
1 準備
2 補題
3 定理4の証明
第5節 具体例
1 リプシッツ連続函数族
2 単調函数族
3 ノンパラメトリック回帰
4 多変数単調族
5 線形指数族
第6節 おわりに
<b>第3部 動学と均衡理論の潮流</b>
第11章 順序集合上の不動点定理と動的計画法(八尾政行)
第1節 はじめに
第2節 不動点定理
1 位相空間の不動点定理
2 距離空間の不動点定理
3 順序集合の不動点定理
第3節 経済学における動的最適化問題と動的計画法
1 例:1部門成長モデル
2 モデル
3 ベルマン作用素の不動点
第4節 おわりに
第12章 貨幣的資産価格モデルと経済変動理論(加藤寛之)
第1節 はじめに
第2節 結果の概観
第3節 モデル
第4節 分析
第5節 おわりに
第6節 数学付録
第13章 公債発行ルールとマクロ経済動学(盛本圭一)
第1節 はじめに
第2節 公債発行ルールの理論研究
1 経緯と比較
2 先行研究のまとめ
第3節 公債発行ルールの数理分析
1 Morimoto et al.(2013)のモデル
2 Morimoto et al.(2013)の結果
3 成長モデルにおける財政政策と数理解析
第4節 今後の課題と展望
1 数量評価
2 公債発行ルールの理論的基礎付け
第5節 おわりに
索引
【著者紹介】
武藤 功
防衛大学校人文社会科学群公共政策学科教授
1987年慶應義塾大学経済学部卒業、1989年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、1992年同博士課程単位取得退学。1992年防衛大学校講師、1996年同助教授を経て、2007年より現職。専門は近代経済学史。
主要業績:「ワルラスと『社会数学』の伝統」『三田学会雑誌』(86巻2号、1993年);『経済数学への招待』(共著、勁草書房、1994年); “Mathematical Economics in Vienna between the Wars,” <i>Advances in Mathematical Economics</i>, 5, 2003; アダム・スウィフト『政治哲学への招待』(共訳、風行社、2011年)ほか。
内容説明
効用理論と意思決定、社会数学の伝統、および動学と均衡理論という3つのテーマによって、数理経済学の歴史的発展を振り返り、複雑に変容する社会に挑む最先端の研究成果を示す。
目次
第1部 効用理論と意思決定(効用理論の学説史―ParetoとSamuelsonについての覚書;効用理論の新展開;曖昧さとシグナリング・ゲーム)
第2部 社会数学の伝統と経済理論の潮流(「社会数学」の学統と数理経済学の誕生;自由貿易均衡と不等価交換;社会的選択理論の基礎 ほか)
第3部 動学と均衡理論の潮流(順序集合上の不動点定理と動的計画法;貨幣的資産価格モデルと経済変動理論;公債発行ルールとマクロ経済動学)
著者等紹介
武藤功[ムトウイサオ]
防衛大学校人文社会科学群公共政策学科教授。1987年慶應義塾大学経済学部卒業、1989年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、1992年同博士課程単位取得退学。1992年防衛大学校講師、1996年同助教授を経て、2007年より現職。専門は近代経済学史
花薗誠[ハナゾノマコト]
名古屋大学大学院経済学研究科准教授。1994年慶應義塾大学経済学部卒業、1996年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、2003年ペンシルベニア大学Ph.D.(経済学)。2003年京都大学経済研究所講師、2006年名古屋大学大学院経済学研究科講師を経て、2007年より現職。専門は産業組織論、ゲーム理論、契約理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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