内容説明
「ゴシック小説」は、18世紀末から19世紀にかけて英国で興隆した。本書では、主に19世紀英国の「ゴシック小説」を取り上げ、「怪物」、「旅」、「写真」、「博物館」、「自己像」という視点から読み解き、その成り立ちと物語構造を明らかにする。『ケイレブ・ウィリアムズ』、『フランケンシュタイン』、『ドリアン・グレイの肖像』―。怪奇と驚異に満ちた「英国ゴシック小説」の入門編。
目次
第1部 ゴシック小説の物語構造(旅と秘密―『ケイレブ・ウィリアムズ』と『フランケンシュタイン』;ユートピアと怪物―ありえない場所とありえないモノ)
第2部 『ドリアン・グレイの肖像』を読む(視線と二つの肖像―ゴシック的自己像の誕生;博物館と写真の時代)
著者等紹介
坂本光[サカモトヒカル]
1961年生まれ。1991年慶應義塾大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程単位取得退学。慶應義塾大学文学部教授。専門は19~20世紀の非イングランド系英文学、特にゴシック小説(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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コニコ@共楽
16
『ドリアン・グレイの肖像』をゴシック小説という観点から紐解いた評論。前半が『フランケンシュタイン』を旅という視点から考察する章、後半では『ドリアン・グレイの肖像』で、刻々と変化する内面を投影する絵と、時間を止めた外見との乖離とその秘密をドリアンが楽しみ、かつ苦しむという点を「博物館と写真の時代」という章で考察している。過去の偉大なものを収集することで、自己像を歴史の枠組みの中に位置づけようとするのだが。日常に突然起こった非日常の秘密をドリアンはやがて制御できなくなるというゴシック王道の恐怖がそこにあった。2025/01/04
paluko
8
『フランケンシュタイン』、その作者メアリ・シェリーの父ウィリアム・ゴドウィンの著した『ケイレブ・ウィリアムズ』、さらに『エクソシスト』『ドリアン・グレイの肖像』という著名な作品をとりあげ旅・エンクロージャー・写真術・コレクションなど時代の流行をも援用しながら分析しており、怪奇幻想文学の歴史や構造の理解に役立つ一冊。それにしても、フランケンシュタインと吸血鬼ドラキュラという二大怪物が同じひと夏(1816年のスイス・レマン湖)の退屈しのぎの物語競作から生まれたというのはボサノバの誕生にも似て興味深い。2024/03/14
志村真幸
1
『ケイレヴ・ウィリアムズ』と『フランケンシュタイン』を「旅と秘密」という切り口で解き明かした第1章は、秘密というキーワードが巧みに機能している。 第2章は、ユートピアと怪物と『エクソシスト』。秩序と怪物の対比がおもしろい。 後半の2章は、ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』がテーマ。肖像画や写真と、19世紀後半イギリスの博物館や美術館といった施設整備と合わせて論じられることで、新たな読みを提起している。 いずれも、従来の読みに、社会的な切り口やキーワードをくわえることで、新しい世界を提案する。 2023/10/13
ハルト
1
読了:○2013/09/11