内容説明
少年期の禅的修道を原点に、「東洋哲学」に新たな地平を拓いた井筒俊彦―その境涯と思想潮流を、同時代人と交差させ、鮮烈な筆致で描き出す、清新な一冊。
目次
第1章 『神秘哲学』―詩人哲学者の誕生
第2章 イスラームとの邂逅
第3章 ロシア、夜の霊性
第4章 ある同時代人と預言者伝
第5章 カトリシズム
第6章 言葉とコトバ
第7章 天界の翻訳者
第8章 エラノス―彼方での対話
第9章 『意識と本質』
第10章 叡知の哲学
著者等紹介
若松英輔[ワカマツエイスケ]
1968年新潟生まれ。慶應義塾大学文学部仏文学科卒。批評家。(株)シナジーカンパニージャパン代表取締役社長。「越知保夫とその時代」で第14回三田文学新人賞評論部門当選(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
94
若松先生の素晴らしいご本です。私も井筒先生の著作集を読みましたが東洋哲学全てあるいは古代ギリシャ哲学についても研究されていたことをかなり克明に記されています。それと関連して遠藤周作や小林秀雄などついても触れられていて範囲がかなり広い分野にわたっていて読んでいる方がなかなか追いつけませんでした。再読しようと思いました。2020/01/28
Gotoran
58
類稀な博識と独創性を兼ね備えた哲学者井筒俊彦。ギリシャ哲学、ロシア文学、イスラーム学者、カトリック、空海等々の対話から導き出した人類の叡智。井筒の少年時代の禅的修行に始まりギリシャ哲学やイスラーム哲学との邂逅から『意識の本質』等で独自のコトバ論に繋げる思想潮流が、井筒の足跡に沿って丹念に論考されていく。壮大なスケールで展開される井筒哲学の真髄を抽出する興味深い論述に驚愕と感嘆を覚えた。著者の若松は、読み手を井筒哲学の深みへと誘ってくれた。貴重な読書体験だった。2017/12/10
i-miya
29
2013.09.15(読んだわけではありません、日経新聞2013.09.14朝刊、文化面) (見出=東西哲学の対話、光再び) (見出=井筒俊彦、全集や復刊続々) (見出=イスラム文化理解の助けに) (全集は2015年春完結予定) (講座も相次ぐ) 生誕100年、来年に。 世界的なイスラム学者で哲学者井筒俊彦。 1914東京都生まれ、慶應義塾大学名誉教授、30超の語学を理解、イスラム思想のほか、ギリシャ哲学、中国老荘思想、仏教思想などに通じる。 2013/09/15
Bartleby
23
井筒俊彦を孤高の思想家・完成した人物としては描いていない。彼があらゆる時代・文化の人々と共鳴しあいながら動的に思想を生み出していくプロセスを描いている。それがこの本の良い点だと感じた。特に前半は、尊敬できる人物たちに出会い、彼らから知識と知恵を吸収しようとする若い井筒の姿が浮かんできて新鮮な印象を受けた。雑誌連載の頃の「意識と本質」を調べ、「コトバ」という語が特別な意味を持ち始める瞬間を指摘した箇所は、一人の人物の中で思想が結実する様を見るようで刺激的だった。2014/12/14
原玉幸子
21
私なりに「実存主義→構造主義→言語学と辿った西洋的な哲学は、それほどは大したことがなく、イスラムもロシアも包含した東洋的な実践が『道』であろう」が井筒の真髄と理解したのですが、「それって構造主義をすっ飛ばしただけじゃないの?」と思い、読中、「はて?」と立ち止まりました。実は、彼の用語で捉える世界観の実存主義は深くて、解釈の元となる感性(コトバと言ってもいい)は、井筒が詩人だったからなのだと、本書に気付かされたのでした。井筒も若山も深い。(◎2023年・夏)2023/07/22