内容説明
古来、倫理学の研究対象であり、まさしく道徳の目指すところであった「徳」―従来の知の枠組み、価値序列、社会的秩序等の崩壊・転換期にある世紀末の今こそ、初発の「問い」を謙虚に問いなおし、東西の思想的遺産を踏まえて、「徳」を問うことの現代的意義の射程を探索する。
目次
序にかえて―善悪を語ること
モラル・モニズムが忘れたもの―徳倫理学再考
《徳》と倫理的実在論―アリストテレスの「徳」概念の現代的意義
政治と徳―コンフォーミズムとアゴニズム
価値計算のひとつの可能性―N・ハルトマンにみる徳目の選択法則
近世儒教における徳の意味
環境と身体―朱子学からの考察
リベラリズムと徳―公教育を手掛かりに
義務の倫理と徳の倫理
感想・レビュー
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うえ
6
「朱子学における、徳目の基本は「五常」であり、「徳」の解釈は「得」でなされる。『中庸章句』「天の命ずる、之れを性と謂ひ、性に率ふ、之れを道と謂ひ、道を修むる、之れを教と謂ふ」の朱註に次のようにある「是に於て人と物との生、各々其の賦する所の理を得るに因りて、以て健順五常の徳を為す。所謂、性なり。」「健順五常之徳」は、『大学或問』では「健順仁義礼智之性」とあり…この『或問』の表現は「陰陽五行」にならったもので、「健」は「陽」、「順」は「陰」に対応し、「仁礼」は「陽」、「義智」は「陰」に属すと説明している」2020/05/24
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- 和書
- 翳りゆく午後