内容説明
ろうの両親と、ふたりの聞こえる子どもたち。異なる身体をもつ一家の愛しい記録。
目次
星の情景
痛みを拡げて
ことば以前の声
父の視点
すべての始まり
あまたのカケラ
ことばをまっとうする
世界と調和するとき
身体にたたえていることば
ナマモノのことば
名前から生まれる世界
熊本に越して
世界とつながっていることば
関係性の結晶
幸福な空白
ゆるくしめて、ゆるくほどいて
ケンカしよう
うれしい体よ、おやすみ
働くということ
ひさしぶり
水中のことば
マチズモ脳と家事
安心感の表れ
仲間として共に
祈りのひとしずく
著者等紹介
齋藤陽道[サイトウハルミチ]
1983年、東京都生まれ。写真家。都立石神井ろう学校卒業。陽ノ道として障害者プロレス団体「ドッグレッグス」所属。2010年、写真新世紀優秀賞受賞。2013年、ワタリウム美術館にて新鋭写真家として異例の大型個展を開催。2014年、日本写真協会新人賞受賞。写真集に『感動』、続編の『感動、』(赤々舎)で木村伊兵衛写真賞最終候補。著書に『異なり記念日』(医学書院・シリーズ ケアをひらく、第73回毎日出版文化賞企画部門受賞)など。写真家、文筆家としてだけでなく、活動の幅を広げている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とよぽん
43
写真家の齋藤陽道さんが「暮しの手帖」に連載した25編のエッセイと写真が単行本になった。タイトルが面白くて、そして齋藤さんの近況にも興味があり、借りてきた。ろう者である陽道さんと妻のまなみさん。生まれてきた樹くんと畔くんはコーダ。4人の家族は手話と音声で会話する。「手を動かして、声色豊かな表情で、ことばをそそいでくれた」子どもたちに陽道さんは感謝して、手話がある暮らしを読者に届けようと執筆した。聞こえる人も聞こえない人も、「ことば」を介して伝え合う。陽道さんはろう者の声を継ぐ覚悟をもって。2024/01/07
Comit
22
市立図書〜タイトルに惹かれた一冊。耳の聴こえない写真家である著者が、家族と向き合い、子育てを通しながら、自分や妻、子供たち、それぞれの存在や社会との関わり方について綴った本。音がない事で苦しんだ幼少期、音がない事で出会った人達、音がない事で得られた幸福、考えさせられる本でした。一人一人を尊重する考え方がいいです。挿絵のように挟まれている写真も素敵です✨2024/05/28
かりん
6
4:《生活を大切に。大きなよろこびに。》昨年ポートレート撮影イベントに参加し、会場で購入。データいただいてすぐは「自分のビジュアルが好きじゃない」の壁をこえられなかったんだけど、時が経つにつれて愛着が湧いてきた。個展のあるタイミングでこの本も読みました。まっすぐな言葉がうわ滑りせずに刺さるのは、齋藤さんが実際に、生活のなかでの小さな発見を逃さず、それを大きなよろこびにしているからだろうな。障害者だからという発言とまなみさんのエピソードが印象的。最後に出てくる、樹さんからの「だいじょうぶ!」にじーんとした。2025/03/29
すぬぴ
5
タイトルに惹かれて。著者は聾者の写真家。妻で同じく聾者のまなみさんとの間に生まれた聴者である子どもたちとの暮らしを美しく優しい文章と写真で綴る1冊。聾者にとっての「見る」は、そうでない私には想像できないくらい深かった。「聴者には感知すらもできない別次元の幸福」という力強い自負がのぞく最終章「祈りのひとしずく」がとても好き。障がい者が直面してきた蔑視への対抗が幸福の物語であり、著者が貪欲に追い求めるものでもある。3人のお子さんと紡いでいく幸福の物語を、これからもぜひ読ませてもらいたい。2024/08/29
宮崎太郎(たろう屋)
4
齋藤さんの言葉は何故か頭で読んでるというより体に響く気がします。 「手話を身につけるには見ることが大切。世界では一瞬ごとにいろんな現象が起こっていますね。その現象を、目をつぶっても細かく思い出せるくらい、とことん見て下さい。子どものようにその現象を、器としての自分に宿らせると捉えるといろんなことがしっくりくるのです。」 言葉は感じた現象を人に伝えるための手段だから、その現象をじっくり見たり、匂いを嗅いだり、触れてみる。そんな風に日常を感じたい。心地よい文章が染みました。2024/08/18