内容説明
戦争に負けて、戦史叙述で勝った旧ドイツ参謀本部。第二次世界大戦の惨敗にもかかわらず、ドイツ国防軍と参謀本部の名声はなぜ残ったか?“国防軍潔白神話”は、全くの人工的産物だった!?敗戦とほぼ同時に米軍の保護のもと始まった“国防軍神話化作業”。
目次
1 国防軍潔白論の生成―米軍「Historical Division」企画との関連において
2 冷戦の前衛としての東西両ドイツ史学
3 国防軍免責の原点?―ニュルンベルク裁判:「将軍供述書」の成立をめぐって
4 戦犯訴追と冷戦―一九四九年マンシュタイン裁判をめぐる問題
5 「ヒンメロート意見書」―西ドイツ再軍備のための軍事専門家委員会による提言
6 書評
著者等紹介
守屋純[モリヤジュン]
1948年生まれ。現在桜花学園大学講師。専攻:国際関係史・軍事史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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筑紫の國造
8
ナチスと比べて、清廉なイメージを持たれてきた国防軍。しかし、そのイメージは戦後まもなく国防軍の将校と西側諸国によって意図的に作り出されたものだった。本書は、「国防軍潔白神話」がどのような意図のもとに、誰によって作られてきたのかを明らかする。「神話」作りは早くもドイツ敗北直後の1946年から始まっていた。冷戦を見据えたアメリカは国防軍のソ連との戦闘経験に高い価値を起き、国防軍将校の側もこれに呼応して戦史編纂の動きが始まったのである。「歴史」が意図的に作られていく過程を見せてくれる好著。2024/12/13