内容説明
明治新政府の組織・制度の確立に大きな役割を果たした『新論』の著者にして彰考館の総裁・弘道館の総教であった会沢正志斎が水戸藩政に果たした功績とは。天保の改革を積極的に推進し、「天下の魁」として水戸藩の名声を高めた経世家としての一面も明らかにし、明治維新直前という激動の時代を生き抜いた正志斎八二年の生涯を繙く。水戸藩の幕末・維新史としても必読の書。
目次
会沢正志斎の誕生とその家庭
藤田幽谷に学ぶ
青藍舎の教育
彰考館に仕官
父母の逝去と結婚
イギリス人、大津浜上陸事件
『新論』の執筆
名簿主・斉昭の登場
天保の改革
弘道館の創設
弘化甲辰の変
正志斎塾の隆盛と将軍の表彰
開国、ペリーの来航と斉昭の幕政参与
継嗣問題と修好通商条約の調印
勅諚(戌午の密勅)降下
安政の大獄
桜田門外の変
「時務策」を著し開国を論ず
晩年の正志斎
著者等紹介
安見隆雄[アミタカオ]
昭和33年3月茨城県立水戸第一高等学校卒業。同37年3月茨城大学文理学部文学科(史学専攻)卒業。同37年4月~同県立高等学校教諭(多賀・高萩・日立第一・水戸第一)。同59年4月~同県立歴史館、史料部史料室勤務(主任研究員、史料室長)。平成2年4月~同県立高校教頭(那珂・那珂湊第二)。同6年4月~12年3月同県立高校校長(下館第二・大洗・水戸第一)。同12年4月~16年3月学校法人・明秀学園日立高等学校・理事・校長。水戸史学会副会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きさらぎ
5
藤田幽谷の弟子で、水戸学の流れを受け継ぐ『新論』を記した学者。基本姿勢は尊皇・親幕・攘夷だが、晩年には開国論を唱えた。『大日本史』編纂最末期に師幽谷と共に関わり、藩校「弘道館」の創設にも関わり、「戊午の密勅」事件や「桜田門外の変」などの際には意見書を書いている。享年82才。明治維新こそ目にしなかったものの、幕末水戸藩と共に生きた人といえる。歴史学を徹底的に学び、兵学にも造詣が深かったとのことで、立論は中々に現実的な印象。晩年に記した「時務策」は開国論に傾き、老耄のそしりを受けたりもしたらしい。2016/08/21