出版社内容情報
《内容》 運動生理学は20世紀の前半には身体運動,とくにスポーツ活動に科学的根拠を与えるものとして重要であったが,20世紀の後半には健康の維持と増進に科学的基盤を与えるものとして重要な役割を果たしてきたと考えています. 運動生理学を理解するためにはその基礎となる生理学の知識を得ておくことが必要である.第1部で運動時の身体の動きについて器官別に記述している.東京オリンピック以降,一般人の健康体力づくりへの関心が高間たことに呼応して,運動による疾病の予防が運動生理学の重要な課題となった.これに関する研究は現在なお盛んに行われており,確立された重要な知見について第2部で取り上げています. 《目次》 はじめにI部 運動とからだの働き1章 運動生理学とその発展1 運動生理学とは2 運動とスポーツ3 運動生理学の発展4 運動生理学の課題2章 筋肉と運動1 筋肉の分類と骨格筋の構造2 筋収縮のメカニズム3 骨格筋線維のタイプ4 筋収縮のエネルギー 1.ATP-CP系 2.乳酸系 3.酸素系 4.スポーツ種目とそれに用いられる主たるエネルギー系5 筋収縮の4つの型 1.等張性収縮 2.エクセントリック収縮(遠心性収縮) 3.等尺性収縮 4.等速性収縮6 負荷の大きさと運動時間7 筋力とパワーの関係8 筋力9 筋持久力10 筋運動の効率と経済速度11 筋電図12 筋にある感覚受容器-筋紡錘とゴルジ腱器官 1.筋紡錘 2.ゴルジ腱器官 3.伸張反射と相反抑制 4.腱器官からの反射3章 神経系と運動1 神経系の概説 1.神経系の分類 2.ニューロン 3.静止電位と活動電位 (1)静止電位 (2)活動電位 (3)跳躍伝導 4.活動電位の伝導の原則 5.シナプス2 末梢神経系 1.体性神経系 (1)脳神経 (2)脊髄神経 2.自律神経系 (1)交感神経系と副交感神経系 (2)交感神経系の経路 (3)副交感神経系の経路 (4)自律神経求心系の経路 (5)自律神経系の機能 (6)随意運動時の筋交感神経の活動3 中枢神経系 1.脊髄 2.脳幹 (1)延髄・橋 (2)中脳 (3)間脳 3.小脳 4.大脳 (1)大脳基底核 (2)大脳皮質4章 呼吸と運動1 呼吸器の構造と機能2 呼吸運動3 肺の容量4 呼吸運動の調節 1.呼吸中枢 2.神経的調節 3.化学的調節5 酸素と二酸化炭素の移行6 運動時の呼吸数および換気量7 運動と酸素8 最大酸素負債量5章 循環と運動1 循環器概論2 心拍出量 1.心拍量の測定法 2.安静時の心拍出量と姿勢、環境 3.最大心拍出量3 動静脈酸素差4 心拍数 1.安静心拍数 2.最高心拍数 3.負荷の強さと心拍数 4.作業の種類と心拍数 5.精神的緊張と心拍数 6.潜水中の徐脈 7.気温と心拍数 8.心拍数の立上りと年齢5 スポーツ心臓6 血圧 1.Poiseuilleの法則 2.血圧の日内周期 3.運動と血圧 (1)自転車エルゴメータ運動 (2)トレッドミル運動 (3)歩行とランニング (4)等尺性運動 (5)最大運動時の最高血圧と年齢 (6)筋線維組成と血圧7 酸素輸送系としての循環 1.最大酸素摂取量 (1)最大酸素摂取量の測定法(直接法)とその規準 (2)最大酸素摂取量の測定法(間接法) (3)最大酸素摂取量の示し方 (4)測定法による最大酸素摂取量の違い (5)競技者の最大酸素摂取量 (6)一般人の最大酸素摂取量 2.最大酸素摂取量の制限因子 (1)換気量 (2)肺拡散とヘモグロビンの酸素結合力 (3)最大心拍出量 (4)筋毛細血管から筋ミトコンドリアへの酸素の移行6章 エネルギー代謝と運動1 エネルギー代謝の測定法 1.直接熱量測定法 2.間接熱量測定法2 呼吸商と呼吸交換比3 運動のエネルギー代謝の示し方 1.酸素摂取量(Vo2) 2.消費カロリー 3.メッツ(Mets) 4.エネルギー代謝率(RMR) 5.心拍数4 基礎代謝 1.体表面積の推定式 2.体表面積を用いた基礎代謝の推定式 3.体重を用いた基礎代謝の推定式5 身体活動時のエネルギー代謝 1.日常活動と運動のエネルギー代謝 2.歩行のエネルギー代謝7章 体温調節と運動1 体温 1.体温の恒常性 2.体温の測定 3.体温の生理的変動2 熱産生 1.基礎代謝 2.特異動的作用 3.ホルモンの作用 4.運動3 熱放散 1.伝導および対流 2.放射 3.不感蒸散 4.発汗 5.汗4 体温調節中枢と体温調節のメカニズム 1.温度受容器 2.体温調節中枢 3.体温調節の実施5 運動時の体温調節 1.運動時の直腸温と皮膚温の変動 2.環境温と運動中の熱代謝 3.運動時の発汗 4.高温下の運動 5.高温に対する順化 6.低温下の運動と順化6 熱射病 1.熱射病(熱中症)の実態 2.熱射病患者の臨床症状 3.水分の補給 4.熱射病対策 (1)アメリカスポーツ医学会の主張 (2)日本体育協会の対策8章 ホルモンと運動1 ホルモンの概説 1.ホルモンとその特徴 2.視床下部と下垂体 (1)下垂体 (2)視床下部と下垂体前葉から分泌されるホルモン (3)視床下部と下垂体後葉から分泌されるホルモン 3.甲状腺 4.上皮小体 5.膵臓 (1)インスリン(インシュリン) (2)グルカゴン 6.副腎 (1)副腎髄質 (2)副腎皮質 7.性腺 (1)睾丸 (2)卵巣 (3)女子の性周期2 運動によるホルモンの変化 1.エピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)と運動 2.成長ホルモンと運動 3.甲状腺ホルモンと運動 4.糖質コルチコイド、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)と運動 5.レニン、アンギテオシン、アルドステロンと運動 6.インスリン、グルカゴンと運動 (1)インスリン (2)グルカゴン 7.性ホルモンと運動 (1)テストステロン (2)エストラジオールとプロゲステロン (3)女子の性周期と運動9章 消化吸収と運動1 消化器の運動 1.咀嚼と嚥下 2.胃の運動 3.小腸の運動 4.大腸の運動2 消化と吸収 1.口腔内消化 2.胃における消化 3.膵液 (1)たんぱく質消化酵素 (2)脂肪消化酵素 (3)炭水化物消化酵素 (4)膵液の分泌 4.胆汁 5.小腸内での消化吸収 (1)糖質 (2)たんぱく質 (3)脂質3 運動時の消化吸収 1.運動時に起こる消化器症状 2.食道の蠕動に対する運動の影響 3.胃内容の排出に対する運動の影響 4.胃液の分泌に対する運動への影響 5.小腸通過時間と運動 6.大腸通過時間、胃腸通過時間と運動 7.腸管の血流と運動 8.腸管からの吸収に対する運動の影響 (1)全身的な測定法 (2)小腸の部分的潅流法(三重管腔潅流法)10章 骨と運動1 骨とその役割2 ヒトの骨のミネラル量と運動 1.骨のミネラル量の測定法 (1)単一光子吸収法(SPA) (2)二重光子吸収法(DPA) 2.発育期の骨のミネラル量と運動 3.成人の骨のミネラル量と運動 4.骨のミネラル量に及ぼす女性ホルモンとカルシウム摂取量の影響 (1)骨のミネラルと女性ホルモン (2)骨のミネラルとカルシウムの摂取量3 動物を用いた研究 1.発育期の実験動物を用いた研究 2.成熟した実験動物を用いた研究II部 運動と健康・体力11章 寿命と運動1 大学生時代のスポーツ活動と寿命2 プロスポーツ選手の寿命3 社会人として運動を実施している者の寿命4 退職した高齢者の歩行が寿命に与える効果5 動物実験による寿命の研究12章 臥床・不使用の生理学1 臥床(ベッドレスト)による尿成分の変化2 臥床による体液量の変化3 不使用による動物の骨の変化4 臥床、無重力によるヒトの骨の変化5 不使用による筋肉の変化6 臥床による呼吸循環機能の変化7 臥床による姿勢保持能力の変化8 寝たきり老人の身体的特徴13章 体力と体力テスト1 健康と体力の定義 1.健康の定義 2.体力の定義2 体力の構成因子3 文部省の旧体力テストと新体力テスト 1.小学校低・中学年運動能力テスト 2.小学校スポーツテスト 3.スポーツテスト 4.壮年体力テスト 5.日本人の体力の推移 6.文部省の新体力テスト4 アメリカのYouth Fitness Test5 ヨーロッパの体力テスト(Eurofit) 1.呼吸循環の持久力のテスト 2.運動能力テスト6 国際体力テスト標準化委員会の体力テスト7 運動負荷テスト 1.医学的検査としての運動負荷テスト 2.運動負荷テストの禁忌 3.生理学的検査としての運動負荷テスト 4.運動負荷テストで得られる主な生理学的指標 (1)最大酸素摂取量 (2)AnAerobic Threshold(AT) (3)BorgのscAle 14章 からだのトレーニング1 トレーニング総論 1.トレーニングとコンディショニング 2.スポーツ・トレーニングの原則2 筋肉のトレーニング(レジスタンス・トレーニング) 1.等張性トレーニング 2.等尺性トレーニング 3.等速性トレーニング 4.等張性、等尺性、等速性トレーニングの比較 5.筋持久力のトレーニング 6.筋力、筋持久力のトレーニングと筋線維タイプ 7.プライオメトリックス3 呼吸循環機能のトレーニング 1.体育科学センター方式 2.CooperのAerobics15章 老化と運動1 運動と関係が深い器官の働きの加齢に伴う変化 1.加齢に伴う運動ニューロンの変化 2.加齢に伴う骨格筋の変化 3.加齢に伴う呼吸循環機能の変化2 加齢に伴う体力テスト値および競技記録の変化 1.筋力 2.筋パワー 3.心肺の持久力 4.一流競技選手の競技記録3 高齢者の運動 1.高齢者の健康チェック 2.高齢者の筋肉トレーニング 3.高齢者の持久力トレーニング 4.高齢者の歩行16章 肥満と運動1 肥満と健康2 肥満の判定法 1.体格指数から求める方法 2.標準体重から求める方法 3.皮下脂肪厚から求める方法 4.体脂肪率から求める方法 (1)水中体重測定法 (2)生体通電法 (3)DEXA法3 肥満の対策 1.食物摂取の制限 2.運動量の増加 3.アメリカ・スポーツ医学会の減量プログラム17章 高血圧と運動1 血圧の測定法2 高血圧の判定基準3 高血圧の罹患状況4 運動と血圧に関しての横断的研究5 運動と血圧に関しての縦断的研究6 高血圧の予防と治療のための運動処方18章 冠動脈硬化性心疾患と運動1 冠動脈硬化性心疾患の罹患状態についての活動的な職業と非活動的な職業の従事者の比較2 冠動脈硬化性心疾患防止に対する余暇活動の効果3 冠動脈硬化性心疾患の防止に関するその他の問題19章 糖尿病と運動1 血糖を正常なレベルに維持するメカニズム2 糖負荷試験3 糖尿病の者が運動を実施するに当たって考慮すべきこと4 II型糖尿病の特徴5 運動がII型糖尿病者に与える急性の効果6 運動がII型糖尿病者に与える効果と臥床の影響7 II型糖尿病者に適した運動8 I型糖尿病者に適した運動20章 健康・体力を保持するための運動とエネルギー所要量1 サーキット・トレーニング2 アメリカ・スポーツ医学会の処方 1.呼吸循環機能と身体組成 2.筋力、筋持久力、身体組成と柔軟性3 著者の体力づくり4 性、年齢別エネルギー所要量
内容説明
運動生理学は20世紀の前半には身体活動、とくにスポーツ活動に科学的根拠を与えるものとして重要であったが、20世紀の後半には健康の維持と増進に科学的基盤を与えるものとして重要な役割を果たしてきたと著者は考えている。この考え方に基づいて、1部を「運動とからだの働き」と題して、運動時のからだの働きについて器官別に記述し、2部を「運動と健康・体力」と題して運動が健康・体力に与える効果について記述している。
目次
1部 運動とからだの働き(運動生理学とその発展;筋肉と運動;神経系と運動;呼吸と運動 ほか)
2部 運動と健康・体力(寿命と運動;臥床・不使用の生理学;体力と体力テスト;からだのトレーニング ほか)