内容説明
ユングにとって、人間の中の「悪」の問題は、単に心理学の領域にとどまらず、神と人間の本質的な関係に根ざす、宗教的な問題でもあった。善と悪の対立を抱え込む神との対決の中に、人間の倫理的可能性を見出したユングの思想的核心に迫る。
目次
第1部 ユングにおける悪の位置(悪のありかについての人生初期の確信―『自伝』に依拠して;「善の欠如」の教説批判―「キリスト、自己の象徴」(『アイオーン―自己の象徴表現への寄与』第5章)に依拠して
四位一体論―「三位一体の教義への心理学的解釈の試み」に依拠して
影論―主として「現在と未来」に依拠して)
第2部 ユングにおける宗教的倫理(倫理的神話―『ヨブへの答え』に依拠して;倫理的良心―「心理学から見た良心」に依拠して)
考察と結論―ユングにおける宗教的倫理の可能性
著者等紹介
宮下聡子[ミヤシタサトコ]
1970年千葉に生まれる。1994年早稲田大学第一文学部哲学科心理学専修卒業。1996年東京大学文学部思想文化学科倫理学専修課程卒業。2007年東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻倫理学専門分野博士課程修了。博士(文学)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部(倫理学研究室)助教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Carlyuke
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悪や影, 道徳, 良心についてユングが考えたことが論じられている。自伝からのユング自身の神体験, すなわち生き生きとした恐怖の神が原体験となっているという指摘。道徳律より良心を優先すべきという考え方。神から殺人を命じられても従わない自由が人間には与えられている。道徳に意識的吟味を加えてから行動するという概念は,影の意識化により全体性に到達するという個性化プロセスと通じるものがある。積ん読だった書物だったが, 準備ができたタイミングで読了でき, 自分の成長のために役に立ったと考えられる。良い読書経験。2019/06/17