内容説明
「神と魂との神秘的合一」「魂における神の子の誕生」を説いて多くの聴衆の心を惹きつけた神秘主義者エックハルトは、パリ大学神学部教授時代に「3部作」と呼ばれる厖大なラテン語著作の執筆を計画した。エックハルトの厳密な学問的思考の成果であるこれらの著作を繙かずに、エックハルトの全体像を正しく評価することは今日考えることができない。本巻には現在残されている「3部作」の作品のうち最も完成度が高い『創世記注解』と『ヨハネ福音書注解』を収める。
感想・レビュー
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evifrei
23
アウグスティヌスやアリストテレス、マイモニデスなどの知識を縦横に駆使しながら展開されるエックハルトによる聖書注解。勿論ペルソナからの流出と世界創造など、エックハルトの根幹となる概念も述べられる。さすがにエックハルトの説く注解だけのことはあって、キリスト教の正統教義とは若干ならず趣を変えるが、非常に読み応えがあり純粋に面白い。特に創世記注解が興味深く、初めに天が造られた後に地上の世界が造られたのは、天上界と人間界を分かつことに基づくという指摘から始まる本文はそういう解釈もあるのかという驚きの連続だった。2020/10/03