内容説明
宗教改革の口火を切った「95か条の提題」や、「キリスト者の自由」を含む宗教改革三大文書など、ルターの膨大な著作の中から、彼の思想を理解するために不可欠な主要作品を収録。義認、洗礼、聖餐、この世の権力、教育、死に対する考え方など、幅広いルターの思想を網羅する格好の1冊。
目次
贖宥の効力を明らかにするための討論
ハイデルベルクにおける討論
二種の義についての説教
死への準備についての説教
洗礼という聖なる尊いサクラメントについての説教
キリストの聖なる真のからだの尊いサクラメントについて及び兄弟団についての説教
善い行いについて
キリスト教界の改善に関してドイツのキリスト者貴族に宛てて
教会のバビロン捕囚について マルティン・ルターの序曲
キリスト者の自由について
マグニフィカート(マリアの讃歌)訳と講解〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゃんたか
21
宗教改革から五百年。ルターの一突きで信仰が内面性を取り戻したことには小さくない意味があった。中世の闇に覆い隠された福音の光が国民の手に戻り、愚民の増殖を意図する集金装置としての宗教が歴史的に初めて断罪されるも、歪な安定を誇るバベルの崩壊は内面性の皮肉とも言うべきドグマの細分化と矮小な個人主義の蔓延をも招いてしまった。資本主義社会に呑まれた精神なき専門人、心情なき享楽人とは現代の常識である。夥しい数の殉教者の怒りと近代的合理主義を知る我々からすれば、この種の社会変革は人間世界の必然であったと思わされるのだ。2017/08/23
てれまこし
4
自然哲学と神学とを統合した中世形而上学は、ルターによる内面性の再発見によって再び乖離する。世界から自ら疎外する内的生は科学に見られる機械論的宇宙観とは相容れないものとして、宗教や芸術にその表現の場を移し分化してゆく。また政治権力は魂に対する支配を失い、権力者は自らの私益を顧みる私人と公益を擁護する公人としての二つの人格に分離し、非人格的な国家という支配機構を生み出す背景ともなった。しかし、それが故に、内的生と外的生を再統合しようという試みが時に政治の場にあふれ出すことにもなる。近代が始めから抱えていた矛盾2019/02/01