内容説明
１９１８年、突然の恐怖が人々を襲った。積み重なる死体、人通りの絶えた街、霊柩船と化した兵員輸送船、パニックに輪をかけた当局の対応―。世界中で最大推定１億人の生命を奪った史上最悪のインフルエンザの実態と、その謎を解き明かそうとした科学者たちの奮闘を描く。
目次
１ 群れ
２ 火薬庫
３ 始まり
４ 爆発
５ 流行病
６ 競争
７ 戦い
８ 停滞
９ 終幕
著者等紹介
バリー，ジョン［バリー，ジョン］［Ｂａｒｒｙ，Ｊｏｈｎ Ｍ．］
科学史家。画期的なルポと高く評価された『グレート・インフルエンザ』をはじめ、これまで５冊の著作がある。なかでもＲｉｓｉｎｇ Ｔｉｄｅ：Ｔｈｅ Ｇｒｅａｔ Ｍｉｓｓｉｓｓｉｐｐｉ Ｆｌｏｏｄ ｏｆ １９２７ ａｎｄ Ｈｏｗ Ｉｔ Ｃｈａｎｇｅｄ Ａｍｅｒｉｃａは１９２７年のミシシッピ川の大洪水を描いた名著として知られる
平沢正夫［ヒラザワマサオ］
１９２９年京都生まれ。５３年京都大学文学部卒。フリーランス・ジャーナリスト
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感想・レビュー
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1959のコールマン
55
☆5。訳者あとがきによると、原書から冒頭の80ページが割愛されていること、詳細な引用文献、参考文献のリストが省略されているとのこと。復刻の際には是非ともその部分を復活してほしい。また、「史上最悪のインフルエンザ」同様、米国のことが中心になっているので、日本の事情は速水融著「日本を襲ったスペイン・インフルエンザ」で補う必要がある。それでも内容に関してはピカイチ。新型コロナの現時点まで起きた事、これから起きうる事をまとまって書いてあるかのようだ。背筋が寒くなる。責任ある方々には是非とも熟読してもらいたい。2020/08/03
パトラッシュ
18
1918年のスペイン・インフルエンザはなぜパンデミックにまで発展したのか、科学史家が綿密な取材で当時の実情を追っている。第一次大戦の参戦国で発生したため詳しい報道が許されず、民衆の無知の下で感染が拡大していく過程は怖ろしいほどだ。しかも米軍首脳部は医学界の勧告を無視して感染した兵士を兵舎や輸送船に詰め込んで欧州の戦場へ送り、国や地方の公衆衛生当局は政治の玩具にされて何の対策もせず、ただのインフルエンザが推定１億人の命を奪ったのは半ば人災である事実を明らかにする。戦争に夢中だった人類への劫罰ではなかったか。2020/04/21
くさてる
16
1918年に全世界を襲った「スペイン風邪」。それを蔓延させた理由、治療に立ち向かった科学者、犠牲者たち……と様々な視点から「グレート・インフルエンザ」を語った一冊。視点が現代と当時を行ったり来たりするのと、科学的な解説が難しかったので、読み終えるまで時間がかかったけれど、読み応えがありました。犠牲者が増えていく経過とその結果がいまのコロナウィルスが原因でもたらされている状況と変わりがないところが多く、ぞっとしてしまった。あとがきで著者が警鐘を鳴らしていることが、残念ながら現実となっている印象です。2020/06/27
アヴォカド
14
100年前のいわゆる”スペイン風邪”（スペインで始まったわけじゃないのにね）の実態や科学者たちを描くが、今となっては、予言のようでさえある。人ごみを避けよという勧告や、過小に抑えられる情報、「スペイン風邪は昔の流感にほかならない」と言い切る大佐、瞬く間に医師や看護師や病床が足りなくなり…って、あれ？今の話？と何度も目を凝らしてしまう。その後インフルエンザは監視されてきたし、医学も科学も大きく進歩しているはずだよね。進歩してないのは、科学者の声に耳を傾けず有効な手をしっかり打たない（打てない）為政者か。2021/08/13
Sumiyuki
8
二ヶ月にも及び格闘した我が宿敵ならぬ宿便の如き本、遂に読了。カンザス州ハスケル郡から広まったインフルエンザのお話。パリ講和会議にてケインズをブチキレさせたウィルソン大統領はこのインフルエンザにかかったために頭がイカれていたらしい。それが結果としてナチス誕生へと向かわせた、とは興味深い。抗原ドリフト。@一九一八年に見られた地域的流行の初発例から最終例に至るまでの期間は、だいたい六週ないし八週であった。@（詐欺療法として）樟脳の玉やニンニクが首の周りにぶら下げられた。2020/05/12
