内容説明
認識・実践の両面からの“自己実現”論、そして“価値ニヒリズム”へ―。カントの人間観から、現代の危機を乗り越える「思考態度」を蘇生する。人間存在に「讃嘆と畏敬」の念を抱き、地上における“最高善”の実現を目指したヒューマニズムの哲学者、カント。価値の全面崩壊=“価値ニヒリズム”に面して徹底的に考え抜いた不屈の思索を解き明かし、危機に直面する現代人のための新たな「人間讃歌」を展望する。第35回和辻哲郎文化賞(学術部門)受賞作をより充実させて提示する、まったく新しいカント像。
目次
第1部 認識存在論(カントの純粋統覚と物自体;カントにおける“身体問題”の止揚―人間悟性の自己対象化的性格の剔抉へ―;『純粋理性批判』「演繹論」の「三つの難問」再考―“自己認識の二重拘束”をめぐって;カント「観念論論駁」再考―「定理」の主語の二重性を中心に;研究ノー卜 悟性による内的触発の現場を索めて―「感性論」と「演繹論」をつなぐもの)
第2部 実践価値論(カント“実践理性の優位”の構造と射程―人間にどこまで希望が許されるか―;カントと黄金律;カントにおける価値のコペルニクス的転回―価値ニヒリズム回避の対スピノザ防衛戦略とその破綻;研究ノート カント実践哲学における演繹の戦術転換とその帰趨)
第3部 カントの真意を読む(カントと愛国心の問題―フリードリヒ大王賛美の真意―;“見える大学”と“見えざる大学”―または学問論を装ったカントの党派性とキリスト教批判について―;カント『人間学』の諸問題―解説に代えて―)
“余録”カントとの対話三題
著者等紹介
渋谷治美[シブヤハルヨシ]
1948年7月静岡県御前崎近くの寒村に生まれる。1967年4月東京大学教養学部文科三類入学。1972年3月東京大学文学部倫理学科卒業。同年4月同大学大学院人文科学研究科修士課程入学。1978年3月東京大学大学院人文科学研究科博士課程満期退学。1979年4月東京大学文学部助手。1982年4月埼玉大学教育学部講師、その後助教授(1984年4月)、教授(1997年4月)。2014年3月埼玉大学定年退職。2015年4月放送大学特任教授。2019年3月放送大学定年退職。現在、埼玉大学教育学部長。専攻はカント思想研究、総合人間学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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