内容説明
追い込まれる「性」。日本近代史の中の、まなざしの変容。境界を越えた女たちは、いかに周縁化されたのか。「からゆきさん」研究に新たな地平を切り拓く緻密な表象史。「慰安婦」との断絶と連続。
目次
序章
第1章 身売りの歴史とその思想―近世から近代に連続するもの
第2章 海を渡った女性たち―江戸から明治期
第3章 海外日本人娼婦と明治政府の対応
第4章 「芸娼妓」をめぐる言説と、海外膨張政策への呼応
第5章 分断される女/性―愛国婦人会芸娼妓入会をめぐって
第6章 優生思想と海外日本人娼婦批判
終章
著者等紹介
嶽本新奈[タケモトニイナ]
1978年生まれ。一橋大学大学院言語社会特別研究員。2014年3月一橋大学大学院言語社会研究科博士課程修了。博士(学術)。専門は日本近代ジェンダー史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hatohebi
6
本書は「からゆきさん」の実像に迫るルポルタージュではなく、彼女達を巡る言説分析が中心である。近世から明治初期までの遊女は身売り=年季奉公の扱いで、一応は経済的契約関係として了解されていた。従って年季明けには結婚して普通の家庭に戻ることも可能だった(もちろん身売りが「親への孝」だと教え込む社会経済構造に抑圧されていたことも指摘がある)。西洋諸国から公に人身売買が行なわれていることを批判された明治日本は娼妓解放令を布告するが、遊郭は貸座敷と名を変え、自分の意志で売春する女性に場を貸すだけという名目で存続した。2022/02/03
わす
1
引用。明治10年代の日本は国家の体面を気にして国内の公娼制度は維持しながらも、海外にいる日本人娼婦たちは罰則を定めて取り締まろうとしていた。しかし、勢力膨張を対外政策の中心に据えた明治政府は、日本人男性のための日本人女性の供給と管理を優先し、醜業を為す者を取り締まるはずの移民保護法に朝鮮と清国への適用除外を盛り込み、次々と植民地や占領地に国内の公娼制度に準じた法令を整備していった。2024/08/16
kaharada
1
論文調で文章固すぎてちょい読みにくい…2015/09/01