内容説明
老いた人間は「哲学する」ことを介し、朗らかな放念のなか、自己開展する存在者へと向上を遂げ、次世代の若者たちに対し人生の生き方と未来を開く力を示す義務がある。ここに誕生した新しい“終活”論!!
目次
1 現代日本の高齢者問題(日本の高齢者事情;老後と死について;女性的な死生観)
2 戦後日本「企業社会」がもたらしたもの(戦後の日本社会;会社人間の不幸と悲劇;社会奉仕としての死と生)
3 動物身体・植物生命(西洋近代の“毒”と“闇”;動物と植物;三木成夫“植物生命論”)
4 「まず哲学せよ、それから死ね」―生き直し・学び直しの人間学(老いて「教える」―熊沢蕃山に見る老年哲学;“近代”と老年哲学;老いて「哲学する」)
付論 生と死、天地往還としての芭蕉の「旅」
著者等紹介
大橋健二[オオハシケンジ]
1952年、福島県福島市生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。新聞記者を経て名古屋商科大学、鈴鹿医療科学大学非常勤講師。日本東アジア実学研究会副会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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aiken
15
2019年の本。老年になったら、哲学を学びなおし、「教える」こと、幼子のように「創造すること」をもって日曜日である日々を生き直しなさいという本。さまざまな本が引用されているので今後の読むべき本の参考になった。まだ老年ではないが、学び直しどころか学び始めなので、こういう本を書く著者の知識の源泉を参考にしたい。動物は植物と異なり身体を横にして活動してきたが、唯一人間だけが垂直となり植物へ回帰したらしい。世界の東の端の日本は、稲作文化で植物との共存が顕著に残っているそうだ。こういう発想がでるようになりたい。2022/01/28
tamami
11
著者は、青壮年が主導し「強い個」を前提として成立している現代文明が様々な矛盾や歪みを抱える中で、その解消に向けて、他者に頼らざるを得ない老人と子どもには「弱い個」の論理が必要であると説く。殊に老人には「まず哲学せよ、それから死ね」と、人生の経験知に加え、よりよく生きるための知恵を磨き、社会に還元することが求められているという。高齢化社会の現状を鋭く分析すると共に、古今東西に渡り「学び直し、生き直し」のための事例を渉猟し、死ぬまで如何に生きるべきか、学びの指針を様々に示してくれていて有益である。2020/04/08