内容説明
地方都市はどうなる?「地方消滅」「地方創生」の狂騒のなかで。地方都市では何を幸福として、何を目指して生活が営まれているのか―日本の人口の4割が暮らす地方都市。ショッピングモール、空き家、ロードサイド、「まちづくり」…東北のある中都市を舞台に、この国の未来を先取りする地方都市の来し方行く末を考える。
目次
第1章 地方都市に住まう。(戦争と破壊;空き家問題;都市の感覚水準―高層マンション)
第2章 地方都市を移動する。(鉄道の衰退;自動車と街の更新;移動の停止、犯罪の軌跡)
第3章 地方都市に招く、地方都市で従う。(メディアのまなざし;観光のまなざし;まちづくりとカースト)
第4章 地方都市で遊ぶ、地方都市で働く。(ロードサイドという装置;モールの魅力、モードの誘惑;労働の流動化と「誇り」)
著者等紹介
貞包英之[サダカネヒデユキ]
1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻博士課程単位取得満期退学。現在、山形大学准教授。専攻、社会学・消費社会論・歴史社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いっしー
17
豊富な文献と鋭い考察から地方都市の歴史・現状を分析している書籍とでもいうべきか。著者独特の言い回しに取っ付きにくい面があり。著者自ら述べているように、地方都市の現状をどうするか、どうすべきかまでは踏み込んでいない。地方都市が真の理想都市になるかどうか、まずは議論から始めそのためのたたき台としての位置付けとのことだが、地方都市をどうすべきか、どうあるべきか、今度は著者の考えを聴いてみたい。2016/08/16
8-nosu
15
空き家や高層マンション、鉄道や自動車、メディアや観光やまちづくり、ロードサイドビジネスやショッピングモール、労働などを対象に地方都市の消費に係る現状を教えてくれる一冊。「では地方に住む人はどうすればいいのか?」その問いに答えているわけではなく、あくまでも現在の姿を示し、表題そのままに「地方都市を考える」内容である。いかにも大学教授が書いた文章らしく、まどろっこしく小難しい表現が多く読みづらかった。『地方創生』が過熱化し莫大な予算が地方に与えられているが、地方都市の現状を鑑みれば徒労に終わるのかなぁ。2016/12/14
さまい
6
地方社会の消費を捉えた良本だった。著者が現在も山形に居住しているためか、自身は東京で消費社会を満喫しながらも地方のロードサイドやショッピングモールを批判するありがちな地方消費本になっていないのが良かった。著者が主張する通り、生産の場として衰退した地方では地下の下落、税収不足や競争相手不在の面からも大型ショッピングモールが消えることはないだろう。去年の大沼の閉店により山形は数少ない百貨店不在の県になった。この本で主張する地方の消費の場がロードサイドへシフトしている証左だと感じた。2021/09/02
Hiromu Yamazaki
5
久々に軽くて痛快な(地方)都市論(=消費社会論)を読んだ。「B級グルメ」や「ゆるキャラ」は地方都市が「プライド」を売って大都市に従属的な記号に変えている、地方都市の政治的担い手を希求する結果としての「まちづくり」が地域カーストを強固にしているなど、内容はかなり刺激的。2015/11/18
ちび独
4
同じ東北の地方都市に暮らす者として、興味深く読んだ。少子高齢化、都会への若者流出と、仕方のないことのように思え、対策を打とうにも決め手となる方策が無い中、そもそも大都市に対する地方都市とはどういうことかを考える良著。著者の考えだけでなく、様々な文献に当たっていることも説得力がある。 著者が言うように、この本が地方都市の問題を解決する決め手にはならないが、地方都市で暮らすことに満足感を持つためにはどうしたらいいのか、のヒントにはなるのかもしれない。 時おり著者の偏見的思い込みと思われる部分が気になる。2016/01/29