内容説明
日米開戦の1941年12月8日の朝、一人の前途有望な北海道大学の学生が突然、軍機保護法違反で逮捕され、懲役15年の刑に処せられた。北大の英語教師、ハロルド・レーン夫妻に話した旅行談がスパイ行為とされたのだ。戦後釈放されたが、1947年に宮沢弘幸は27歳で死んだ。拷問と網走刑務所の極寒の中で患った結核が青年の命を奪ったのだ…。悲劇はなぜ起こったのか。一審判決などの裁判記録が消えている中で、上田誠吉弁護士の真実究明の旅は執拗に続く…。
目次
1 判決書の行方を追って(消えていた一審判決と記録;大審院判決を発見 ほか)
2 エルムの学園の日々(生い立ち;エルムの学園へ ほか)
3 日米開戦の朝(迫る危険;「戦時特別措置」の準備 ほか)
4 復元された判決(一審判決の復元作業;見当違いの「思想」認定 ほか)
5 獄のうちそと(悲しい祝宴;網走で ほか)
6 釈放と死(宮沢家の戦後;レーン夫妻、再び札幌へ)
著者等紹介
上田誠吉[ウエダセイキチ]
1926年生まれ。弁護士。元自由法曹団団長。2009年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つらら@道東民
25
北大生だった宮沢さんが、家族にもなぜ検挙されたのか全く分からない、身に覚えのないことで拷問を受ける、潔白を証明しようにも第3者の告発となってしまう皮肉。これは現在の「特定秘密保護法」でも充分起こりえることでしょう。『治安維持法』があった暗黒の時代を忘れていない人はたくさんいるのです。過去を学ぶことも未来を明るくする方法だと私は思います。宮沢さんの名誉が回復されることを祈っています。2013/12/29
かもめ通信
9
北海道を舞台に“実際に起きた事件”を題材にしていると聞いて読んでみた。 日米開戦のその日、大学生だった宮沢弘幸さんはアメリカ人教師のハロルド・レーン夫妻とともにスパイ容疑で検挙された。 話の中に「秘密」があるとは思いもよらず、それほど注意を払わずに気軽に口にした旅の話が「軍事秘密」の「探知」「漏えい」として罪に問われたのだ。 弁護士である著者が当時の裁判記録を探し求め、関係者に取材し、宮沢青年の生い立ちや人となり、レーン夫妻の人柄などを丁寧に紹介しながら、掘り起こされていく“真実”は涙なしには読めない。2013/12/05
ひかりパパ
5
昭和16年12月8日太平洋戦争開戦の日一人の北大生が軍機保護法違反で検挙された。本書によれば宮沢さんはなんでも見てやろうと好奇心旺盛で行動力に富んだ人だった。戦時下自由な活動が制限された社会では危険人物とみなされた。根室の飛行場の話を外人夫婦に語ったことが軍事上の機密を漏洩したとして軍機保護法違反で懲役15年の重い刑罰に処せられた。息子を国賊扱いされた家族の事を思うとやりきれない。2015/05/19
kama-chan
1
特定秘密保護法案に関連して紹介されていた本。何故、逮捕・拘束されたのか、その理由に関連する判決書は既に廃棄されており、判決については復元されたものが紹介されている。「Ⅳ 復元された判決」部分で、その理由があかされる。特高によって逮捕・捜査されたとあるが、その当時の雰囲気が想像できる。現代と当時とを簡単には比較できないため、なんとも言えないが、今回の法案がどのように使われるのか、未来永劫問題なく運用されるのであればよいが、冤罪による逮捕がなくならない現状を見ても、読後、不安になった。2013/12/21
my_you
0
何のために処罰されたかすらよくわからない、スパイ法の犠牲者になった青年のこと。母とくのことを思うと泣けてくる。2015/03/20
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