内容説明
時代は明治中期。鎖国中のチベットをめざしてひとりの学僧が日本を旅立った。能海寛、三十歳。彼はチベット仏教の教典を求めて、日本人として初めてチベットに到達する。しかし、彼は恩師と妻にあてた手紙を最後に消息を絶ってしまう…。100年前のミステリーを追った迫真のドキュメント。
目次
生い立ち―明治仏教の嵐の中で
東と西
南条文雄とマックス・ミューラー
反省会雑誌
「予ト西蔵」―チベット探検宣言
慶応義塾から哲学館へ
河口慧海と能海寛
佐々木静子との結婚、出立の日
四人がチベットをめざした
灯箭炉―寺本婉雅との邂逅〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りこ
1
北森鴻の「暁の密使」はフィクションだがこちらは実話。何故この時代の宗教者達はみなチベットを目指したのか?志し半ばで倒れた一人の仏教者の軌跡からその意味を考えさせられる。
Sin'iti Yamaguti
0
河口慧海の『チベット旅行記』については昔読んだことがある。時を同じくして、チベット求法のため他にも数名が旅立ったことは、この時代の息吹でもあろうが、志を高い仏教者が大勢いたことの証左であると感動。河口と寺本と能海とではそれぞれに微妙に目的が異なっていたようだが、いちばん純粋だったのは能海であったろう。それだけに命を落としたことは残念である。2023/07/19