内容説明
植物の命の色をいただくこの手仕事を伝えたい。聞き書き「時代の証言者」に大幅加筆。染織家・紬織の人間国宝、初の本格的評伝。
目次
1章 時代の証言者(織物との出会い;戦時下 別世界の輝き;「民芸の精神」を受け継ぐ;「自由教育」求めた両親;芸術に生きた兄 ほか)
2章 妣への回帰―新たな民芸を求めて(石牟礼道子さんとの約束;集大成の「曼荼羅」;「色なき色」の世界へ;「芸術学校」に未来を託す;多彩な生徒たち ほか)
著者等紹介
古沢由紀子[フルサワユキコ]
読売新聞東京本社編集委員。1965年生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部政治学科卒。同年読売新聞社入社。山形支局、社会部、ロサンゼルス支局長、生活情報部次長、教育部長、論説委員などを経て現職。教育問題を中心に、様々なテーマで取材を重ねている。伝統工芸や文化・芸術に関心が深く、長期連載シリーズ「時代の証言者」などで志村ふくみの取材を手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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双海(ふたみ)
10
「植物の命の色をいただく」「この手仕事を伝えたい」読売新聞連載「時代の証言者 志村ふくみ」(2013年)をもとに新たに書籍として執筆され、志村さんの聞き書きを中心にまとめた初の本格的な評伝。連載終了以降から2020年まで、様々なテーマで志村に行ったインタビューや取材を中心に構成し、資料をもとにした解説も充実。志村さんのこれまでのライフストーリーが展望できる。2023/11/20
takakomama
4
「読売新聞」の連載と聞き書きをまとめた評伝。民藝の人々との出会いや言葉は貴重です。開発や温暖化で植物などの自然が減ってしまうのは淋しいです。染色の学校「アルスシムラ」を開校した時、著者は89才、娘の洋子さんは64才。その情熱と行動力を見習いたいです。私も、まだまだ頑張れると思いました。2022/02/27
uralaka
3
志村さんの業績がトータルに理解出来た。
夏野
1
染織作家・随筆家、志村ふくみへ聞き書きと評伝。読売新聞に連載されたものをまとめ、増補したもの。志村ふくみの生い立ち、家族の影響や絆、染めに対する信念など、丁寧に描かれていて、読み応えあり。カラーで染めの写真など多数収録されていて、見応えと読む際の参考にもなりました。巻末に略年譜や参考文献もあって丁寧な作りで良かったです。2022/12/24
お抹茶
0
志村ふくみのインタビューと評伝をまとめた本。人生を辿りつつ,代表作や民芸や後世への想いを語る。印象的な表現は次の三点。日本には茶色や鼠色といった「ケ」の複雑な影の色が多様にあり,西洋音楽にはない無限の半音の世界の色をよく使う。鮮やかな赤に夜叉や玉葱で茶を掛けた蘇芳を使うことで,いろいろな面が出てくる女の赤を表現できる。宇治十帖の「色なき色の世界」を見てみたいというのが米寿過ぎの境地。装丁も美しく,スピン(栞紐)が2本あってそれぞれ品の良い色。全体的に彼女の作品のようなセンスが漂う本。2023/02/18