出版社内容情報
川端康成が蒐集した膨大な数の書。
書を通じた川端と文豪たちの交流は、近代文学史と言っても過言ではあるまい。文豪川端康成が美術品のコレクターであったことは近年知られるところであるが、2017年、そのコレクションの中に膨大な書があることが判明した。
晩年、書に異常な執着を示していた川端康成は、自ら『雪国』の冒頭を直筆し、何点も書き残している。
同時に、かつての大家たち(藤原定家、隠元禅師、池大雅、富岡鉄斎など)、同時代の文豪たち(夏目漱石、高浜虚子、田山花袋、林芙美子、横光利一、高村光太郎、齋藤茂吉、生方たつゑなど)の書を蒐集し、あるいは目の前で書かせ、愛眼してきた。
本書は、書、その書についての川端の言葉、あるいはその作家と川端との交流など、多方面からの解説がついた川端康成の書のコレクション本である。
川端香男里[カワバタカオリ]
監修
内容説明
夏目漱石、島崎藤村、芥川龍之介、北原白秋、若山牧水、横光利一、林芙美子…川端が愛蔵した書、一挙公開。
目次
第1章 歴史に名を残す名筆家の書
第2章 文豪たちの書
第3章 川端康成の書
第4章 川端康成宛の書簡
著者等紹介
水原園博[ミズハラソノヒロ]
公益財団法人川端康成記念会理事・事務局長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gtn
29
川端康成が所有していた文豪の書の変遷が興味深い。書の素養があるのは白秋くらいまで。徳田秋声も白秋と同世代だが、もう怪しい。差し障りがあるのか断言したものを目にしたことはないが、太宰、三島由紀夫は下手くそ。2022/03/01
gtn
26
川端康成の妻秀子に宛てた島木健作の詫び状を、川端が軸装したのも分かる。内容は、道端で島木が女房に大声で叱ったため、とばっちりを掛けたというもの。その他、この頃早起き励行しているという割には、今日がその初日だったり、信州旅行したいと念願しながら、熱海に行きそうになったり、捉えどころがない。川端のことにも若干触れているが、「何卒おだいじにと申し上げて下さい」と伝言を託す始末。こんなのんきな手紙を書く本人が、農民運動で四年間も獄中生活を送ったという事実に惹かれる。2021/03/12
クラムボン
14
川端康成が蒐集した文人の書、そして川端自身の書と書簡を紹介する。明治以降の文人の書が中心です。文壇の中心人物なので交友関係は広く、その中で蒐集した文豪たちの墨蹟は眩いばかりだ。纏まって書を見るのは初めてなので、何やら目移りしてしまう。その中で一際異彩を放つのが草野心平の琉球古典舞踊「醜童」の一節。「 心平生来の性格と道程が、今や熟して、今日稀な名筆となった。」とは川端の評 。「書は老いとともによくなりこそ悪くはならない。そこが東洋の芸術としての書のありがたさである。」と語る川端の書は骨太だ。2022/06/25