内容説明
『ケルズの書』とは、8世紀に制作された聖書の手写本でアイルランドの国宝。全680ページのうちの22ページは、最も細密で美しい色彩が施されている。本書は著者が15年間にわたり、この装飾ページの復元模写を試みた記録。細密な構造を解明しながら、制作当時の色彩や図像の謎に迫った著者渾身の書である。キリスト教美術、仏教美術の研究者や愛好家に、またその不可思議な図像は現代アートにかかわる方々にも好適な書である。
目次
模写作品及び解説(ヘブライ語の名前と福音書記者の象徴;聖母と幼子イエス;ベツレヘムにイエス誕生;4人の福音書記者の象徴;聖マタイの肖像 ほか)
色彩や図像の考察(顔料/染料色彩について;図像に関する見方;幾何模様日本との比較;繰り返し模様;線の美『ケルズの書』に用いられている線の特徴 ほか)
制作過程『ケルズの書』の概略―ゆかりの地を訪ねて
著者等紹介
萩原美佐枝[ハギワラミサエ]
1938年横浜に生まれる。早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒業。主任教授道教学仏教学者故福井康順博士に師事。30歳で結婚、55歳の時にマーク・バン・ストーン博士とアイルランドへ行く。その頃テンペラ画を石原靖夫氏に習い始める。この模写作品を描きながら、フラ・アンジェリコ、ボッチチェリーやフィリッポ・リッピ等の模写、風景画などをテンペラで描いている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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帽子を編みます
46
ケルトの装飾写本『ケルズの書』を復元模写した本です。模写作品をはじめ、全てのイラスト、図版、写真、レイアウト、日本文、英文、表紙装丁を作者が行うとあります、この偉業、誇れる作品となりました。気楽に眺めるつもり手に取りましたが、どのページにも作者の情熱が詰まっているようで自然に時間が経っています。素晴らしい一冊です。2025/05/11
tom
17
この本はすごい。HONZの書評を読んで、図書館に注文した。この本を書いた萩原美佐枝さんは、50歳を超えて、世界で最も美しい本の一冊といわれる「ケルズの書」の模写を志し、10数年かけて模写を完成させた。志だけでも凄いと思うのだけど、この精密な本を復元するためのたゆまぬ執念。そのために必要な知識と技法を着実に追求するその姿。ああ、すごいなあと頁をめくるたびに思ったわけです。かなりの驚きを感じながら読んだ本。今年最も驚いた本です。それから、ケルズの書に関する本が数冊あることを発見。読むべき本が増えてしまった。2016/10/26
秋良
9
図書館で偶然見つけた本。CGでも手がかかりそうな緻密な紋様を、手作業で描いているのが素晴らしい。考察を読みながら、なんかラングドン(ダ・ヴィンチ・コードの)が食いつきそうな題材だなと思った。2016/08/28
Eddy
4
ケルズの書の解釈やメッセージについて書かれた本ではなく、1200年前の美しい色彩、装飾、図象の復元模写を試みた詳細な記録本。淡々とした科学的な?説明にも著者の凄まじい熱意と探究心が溢れており圧倒される。去年、訪れたトリニティ大学の図書館で観れた実物は日次2ページ公開×2日でたった4ページだけだったが、この本を眺めるたびに、狭い展示室でみた古びた本の記憶が実物以上に鮮明に思い返される。2017/11/07
takao
4
1200年前のアイルランドの聖書写本。組紐のような装飾は草とか蔦かな?2017/01/08