内容説明
ひとりの主婦が運命に導かれるように美のしもべとなり、植物の命をいただく染織家として自分の道を自分の足で歩くことにより体感した苦悩と歓び。
目次
1 窮極の色
2 予感
3 新しい色
4 一色一生
5 手に宿る神
6 道
7 萌芽
著者等紹介
志村ふくみ[シムラフクミ]
1924(大正13)年滋賀県近江八幡生まれ。染織作家。植物染料による心象風景を織り込んだ紬織が、工芸の枠を超越した表現として高い評価を得る。1986年紫綬褒章。1990年「紬織」の重要無形文化財保持者(人間国宝)認定、1993年文化功労者。現在、長女洋子と共に「都機工房」を主宰。大佛次郎賞を受賞した『一色一生』をはじめ、『母なる色』など随筆の名手としても知れる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アルピニア
58
志村さん初読みでした。以前からずっと気になっていたのですがどの本から入ろうかと迷っていました。この本は、大切な読友さんのレビューを読んで手に取りました。最初の一冊として入り易く、とても幸運な出会いだと思いました。散文詩のような短い文章でありながら、志村さんの深遠な言葉は私を思索の水底に引き込みます。次はもう少しまとまった文章に挑戦したいと思います。p10「哀しいこと、耐えられないような苦しみは、歳月によっていつの間にか浄化されている、今、それにようやくきづいた、死は浄化の領域に入ることだと。」→2019/10/20
ykshzk(虎猫図案房)
28
染色家志村ふくみさんの言葉集。最近、5年越しでずっとやりたかった、完成まで多分2年はかかる作品制作を開始してしまった。お金には多分ならない。誰かの言葉を欲してこの本にすがる。いくつか抜粋。「見えるものを今更みたいとは思わない。知りたいこともそうだ。」「赤の色の領域には聖女も娼婦も住んでいます。」「闇は暗いと思っていたが、本当は明るい、底知れない明るさなのだと少しずつ気づかせてもらっている。」「心につよく願うことがあれば、手がそれを追うという。」本気で色と共に生きた工芸作家の言葉を、お守りにして進もう。 2021/05/20
kayo
27
お名前は知っていましたが文も書かれるとは知らず。色、糸、織を操る哲学者のような潔く強い意志を感じる文章。気まぐれに開いたページを都度読んでは、気高く確固とした信念に満ちた言葉に首を垂れたくなります。「人は白のままでは生きられない」「哀しいかな、その白を汚したい」彼女の手で美しく染まって汚されるなら、糸も本望でしょう。表紙にあるように、この本に50代で出会えて嬉しく思います。この表紙は二重表紙(というより大きな帯)のようで、この下には彼女が染めた美しい赤子の肌のような薄桃の織物が装丁として用いられています。2021/01/08
双海(ふたみ)
26
大正13年のお生まれの染織作家、志村ふくみさん。大学図書館で志村さんの集大成作品集『つむぎ おり』を読んで感銘を受け、本書にたどり着きました。「人間の心に不純物があって、どうして色を純粋にひき出すことができようか」2017/01/29
喪中の雨巫女。
20
《私-図書館》染織作家さんだから、やはり色にこだわってこられたのでしょうね。植物性の染料による紬織の作品をみてみたい。2011/02/23