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内容説明
愛されたいのは男、描くのは女の官能、禁断極めれば厳粛。没後30年にして初画集。誇り高きナルシストの全貌を伝える唯一の画集。生涯貼り替え続けた嗜好満載「スクラップブック」ほか、初公開資料満載。
目次
作品
スケッチブック
スクラップブック
ポートレート
著作文献
年譜
作品目録
著者等紹介
甲斐庄楠音[カイノショウタダオト]
1894年、京都に生まれる。エリート校の中学に入学するが挫折し、京都市立美術工芸学校図案科へ編入。その後、京都市立絵画専門学校に進む。「国画創作協会」の第1回展で鮮烈なデビューを果たす。24歳の楠音は京都画壇の期待の新星となるが、楠音の男色、女装癖、傍若無人な素行が会のリーダー土田麦僊ににらまれ、第5回展で『女と風船』が「穢い絵」として陳列拒否されるという事件が起こる。1928年、国画創作協会解散ののち、楠音は徐々に画壇から離れ、1940年、46歳のときに出会った溝口健二に招かれて映画の世界に活動の場を移す。1955年、61歳のときに『雨月物語』で米アカデミー賞の衣裳デザイン賞にノミネート。1956年に溝口健二が亡くなると、映画から離れ再び絵の世界に戻ることになる。晩年に開催された展覧会の出品作は旧作に手を加えたものが多く、衰えた筆と劣悪な絵の具により、恐ろしいくらい迫力のある美しさが薄れる結果となった。1978年、83歳で亡くなる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒロミ
50
高い本だが古本でゲット。凄味を感じる美人画で知る人ぞ知る存在の甲斐庄画伯。女装家のナルシストでバイセクシャル。花魁や芸者に女装してその姿を模写していたそうです(女装写真も何点か収録されています)。何かヌード写真も収録されてるんですよね…。何故ナルシスト(男)は脱ぎたがるのか。教えて偉い人!でもどの絵もさすがにグロすれすれに魔的な魅力があります。それはもう怖いほど。2015/12/23
U
42
一度みたら絶対にわすれない、かいのしょうの画。彼の活躍した大正時代、彼に限らず多くの画家が、新しい表現をこころみたのでした。にしても、夢二の大正ロマンとは、対極にあるなあ(笑)デロリとした絵。劉生のことば、ぴったりだと思います。かいのしょうの画が市場から入ってくると、好みではないけどなんでか、テンションが上がるっていう(笑)2015/09/07
yn1951jp
42
女装のナルシストが女の情念を描いた『穢い美人画』は大正から昭和初めにかけて一世を風靡した。京の名家に生まれ、人形遊びと女装を好み、モデル女性を思慕し、多くの同性の恋人をもった両性愛者。妖気みなぎる美人画は、同世代の岡本神草らとともに、ひとつの時代の流れを作り出した。「穢い絵は会場を穢くする」と評され、画壇を去った画家は、映画の風俗・衣装考証家となり、溝口健二監督『雨月物語』(1953)で米アカデミー賞衣装部門ノミネート。生涯貼り替え続けたという「スクラップブック」が彼の嗜好性を見事に語っていて素晴らしい。2015/01/16
内島菫
23
久しぶりに喘息が強めに出た後ネットで甲斐庄楠音の絵が偶然目にとまり、本画集を読んで彼もまた喘息を患いその発作がもとで世を去ったことを知る。出世作の「横櫛」しか目にした記憶はなかったが、いわゆるデロリとした灰汁の強い画風は、「幻覚」の燃えるような緋色の襦袢を振り乱しながら踊る女性のポーズと精神が危ういバランスのもとに成り立っているのと同様の繊細さをその奥に感じる。(古風な化粧法なのか)下唇にのみ紅をさしている女性の絵が多く、楠音独特の閉じているだけで笑みを含んでいる口元のラインと相俟って目以上の表情を持つ。2016/11/12
藤月はな(灯れ松明の火)
19
「ぼっけえ、きょうてえ」のカバーともなった「横櫛」、いつぞやか京都の美術館で拝観した「青衣の女」がまた、観ることができて嬉しいです。甲斐庄楠音氏の女性像は女らしいといわれていることをぶち壊す歪みも描きつつ、「女」を表現し、豪奢な衣装の細部へのこだわりも凄いです。「穢い絵で綺麗な絵に勝つ」という意気込みは絵を否定された者が唯一、批判したものへの復讐法にできることだと証明しています。NHKの新日曜美術館も観ましたが一番、驚いたのは一人暮らし先の近所の図書館で甲斐庄楠音の作品展を1978年に行っていたことでした2012/03/25