内容説明
『ローリング・ストーン』誌創刊時からの敏腕インタビュアージョナサン・コットは、危険性を知らされないまま、鬱病治療のため、脳にECT‐電気ショック療法‐を施された結果、15年間の記憶を永遠に失ってしまった。本書は、神経生物学者、老年学者、精神医学者、心理療法学者、宗教家と対話し、人間にとって「記憶」とは何かを追求した貴重な記録。
目次
第1部 忘れる(私はどのように記憶を失ったか;忘れたいということについて―ジェームズ・L・マッガウとの対話;アルツハイマー病について―デイヴィッド・シェンクとの対話)
第2部 記憶する(記憶増強について―シンシア・R・グリーンとの対話;記憶の神経学について―リチャード・レスタックとの対話;虚偽記憶と回復記憶―リチャード・J・マクナリーとの対話;記憶、想像力、魂―トマス・ムーアとの対話 ほか)
第3部 追記
著者等紹介
コット,ジョナサン[コット,ジョナサン][Cott,Jonathan]
「ローリング・ストーン」誌の創刊以来の編集者、インタヴュアー、音楽評論家、作家、詩人
鈴木晶[スズキショウ]
1952年東京生まれ。東京大学文学部卒業。法政大学国際文化学部教授。専攻は身体表現論、精神分析思想。舞踊評論家、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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eirianda
18
鬱治療の電気ショック療法(ECT)の結果、一部長期記憶と幾らかの短期記憶を失った作家が、記憶に関して専門家や宗教家へインタビューしたものを纏めた本。第一部の専門的な話と患者としての苦しみはとても興味深く引き込まれた。次第に内容は宗教、というかかなり神秘主義っぽくなって、ついていくのが困難に…。しかしこの苦しみに立ち向かうのは、魂や輪廻や死後の世界に足を踏み入れないとやっていけないのだろう、と納得した。記憶が自己を作るのだから、全く奇妙で人生迷子な経験。しかも元に戻れない。2017/01/21
echo.
0
某国立大付属病院ではこの電気ショック療法がかなり研究進んでて、そこの閉鎖病棟に入院してた頃は、皆(9割くらい)がそのために入院していた。ので、ちょっと懐かしさもあり。ただそのあたりの背景をすでに知ってる者としては、回復記憶と虚偽記憶のところをもう少し厚く読みたかった。インタビュー形式は読みやすい。2016/04/19
izumiumi
0
面白く読めた。インタビューする相手ごとに章が別れているのだが、前半が面白い。最後の2~3章は宗教の話(少しオカルトっぽい)。オカルトは苦手だが、学者たちへの質問は、名インタビュアージョナサン・コットの上手さで読める。2008/12/12
おだまん
0
電気ショックにて記憶を失った作者が模索する記憶と忘却と人生。記憶は人生。確かにそうなのですが、それ以上に忘却についての可能性をも示唆している。忘れることや認知症は悲しくつらいことには違いないのですがそれで終わってはいけない、それが人生。2008/03/07