内容説明
本書は、近代上海に生きた人々がとり結んだ各種ネットワークを手がかりに『国際都市』上海を成立させていた多面的で重層的な社会的結合関係の在り様を解明することから、近代上海の都市社会に歴史的にアプローチすることを試みるものである。近代上海は、人口の上で大多数を占めた中国人と政治的経済的に都市社会の中枢を握っていた外国人が共存した都市であった。上海の外国人の中において最大の人数を占めていた日本人コミュニティの状態やそれと中国人社会との関係などについては、これまで研究が十分進んでいなかった。本書は、日中関係における日本人と中国人社会との相互依存・競存・敵対の関係を『国際都市』上海に則して解明することにも一つの重点を置くものである。また、日本上海史研究会は創立以来、中国人研究者をはじめとする外国人研究者の参加を得ながら学術活動を進めてきたが、本書も本研究会が積極的に推進してきた日中学術交流の一つの成果とする。
目次
総説 上海―重層するネットワーク(「国際都市」上海と日本・日本人;ネットワーク論;地域エリートと「公」領域論 ほか)
1 上海企業家と「公」領域の諸相(清末上海における「私園公用」と公共空間の拡散;「公益善挙」と経元善―人的な集積とネットワーク;地方政治の革新と上海の紳商団体 ほか)
2 地域エリートとネットワークの諸相(保証人と紹介状のつなぐ救済―上海残疾院にみる慈善界の救済ネットワーク;誘拐と救済の都市間ネットワーク―二〇世紀前半上海の視点から;上海のYWCA―その組織と人のネットワーク ほか)
3 上海のなかの日本(上海内山書店小史;上海日本人居留民と仏教;上海をめぐる日・仏の情報交換ネットワーク―「帝国」と「植民地」の情報統制 ほか)