内容説明
「発達障害は障害ではない。人類本来のヴァリエーションである」。近年盛んに耳にするようになってきた発達障害というものを今までと違う見方で、とらえ直す試み。障害と呼ばれるものの実は障害ではない。人間という生き物が、ほかの生物にない多様性を示していて、その多様性の中でマイノリティであるがために、多数派から障害ととらえられているにすぎないということが、さまざまな実例に沿って論じられている。
目次
序章 人は皆、障害を持ったサルである
第1章 洞窟壁画の無名の画家たち
第2章 うわの空のエジソン
第3章 無筆の勝負師坂田三吉
第4章 癇癪持ちのアインシュタイン
第5章 外国語のできないレオナルド
第6章 古典嫌いのアンデルセン
第7章 付き合いべたなベル
第8章 落ち着きのないディズニー
第9章 遊芸人としてのモーツァルト
第10章 発達障害はなぜ進化したか
著者等紹介
正高信男[マサタカノブオ]
1954年大阪生まれ。専門は、ヒトを含めた霊長類のコミュニケーションの研究。1983年大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。現在、京都大学霊長類研究所教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
トンちゃん
22
ちくま書房から出ていた『天才はなぜ生まれるのか』の復刻版。 余計な話、言葉の使い方のクセ、という点に難あり(読みにくい!)でしたが、お話としては非常に面白い本でした。 誰もが知っている偉人が実は発達障害だった。そして、発達障害だったからこそ偉業を成し遂げられたのではというお話です。 本書に出てくる偉人はモーツァルトやダヴィンチ、アンデルセン、ベル、エジソンといった誰もが知っている偉人ばかり。中には識字障害なのではという偉人も。偉人の功績を再確認しつつ、発達障害を考え直すのにおススメな一冊。2020/03/01
マーブル
11
数人の天才たちを分析。よく言われてきたように、彼らは様々な障害を持っていながら努力や才能によってその天才を顕したのではなく「障害があったからこそ」その天才性を顕現できたのだ。つまり人間の脳は、その機能の欠陥を補うべく他の部分がより能力を発揮することがあり、それが一種の天才として形を成すのだ。かつては許容され、役目を与えられていたものが、画一的な教育が一般的になるにつれ、迫害され、弾き出され、つまり障害として差別を受けるようになった。その誤った差別を理解し、生きやすい社会を作ることの必要性を述べたいようだ。2020/03/03
ムーミン2号
7
エジソン、坂田三吉、アインシュタイン、ダ・ヴィンチ、アンデルセン、グラハム・ベル、ディズニー、そしてモーツァルト。天才と言われる人たちの天才たるゆえんを、障害という面から推量していく。今でこそ、障害にはいろいろあることも多くの人に知られている。上記の天才たちの行動や後世に残したものから、彼らが持っていた障害を判断し、それがゆえに世界に冠たる業績を残したのだとの記述だが、モーツァルトの章は納得いかなかった。この人達の他に、洞窟壁画を描いた人たちにも障害があったのでは、と推理している。2020/03/02
cochon_voyage
3
昔からよく言われていたことを科学的視点を加味して語り直した?まあそれなりに面白かった。洞窟壁画にもそういう特性があったとは!2020/02/24
なゆた
2
初版p12の、6と7行目に抜字(NT→非NT)がある。 それはそれとして、最初は非常にわかりやすく、丁寧に書かれていて面白味もすくないが、後半になってくると文に味が出てきて面白い。多少教養がないと読みづらい一面もあるけれど、本好きな人なら平気だと思う。 ニューロダイバーシティについて考えるなら読んで損はないと思う。 人情的ではないが、学問につながる人の語り口にしては親切。最後の主張もわかりやすい。2022/12/06