出版社内容情報
日常場面で誰もが経験する「嫌悪」という情動。基本情動の一種と数えられ,強迫性障害や動物恐怖症等の精神疾患を理解する上で,欠かせない要素でもある。本書は,その基礎研究から,精神疾患との関係,治療に関する研究まで,網羅的に解説。
巻頭言
序文 精神病理学における嫌悪の重要性
本書の翻訳について
?T.嫌悪の理論とアセスメント
第1章 嫌悪:21世紀における身体と精神の感情
1.なぜ遅れたのか? 嫌悪を無視してきた100年間
2.今になってなぜ? 嫌悪への関心が生まれたいきさつ
3.嫌悪に関する身体-精神前適応理論
4.(いったい)何が嫌悪をそれほどに興味深いものとしたのか?
(1)簡便性(convenience)
(2)汚染(汚染感)
(3)嫌悪尺度(Disgust Scale)
(4)感情の神経科学(affective neuroscience)
(5)不安障害
(6)社会的関心
5.嫌悪研究のこれから
(1)脳メカニズム
(2)嫌悪と精神病理学
(3)嫌悪,動物性を想起させるもの,そして死
(4)嫌悪と汚染感の発達
(5)人類史における嫌悪
(6)嫌悪と他の感情
(7)集団間の嫌悪
(8)嫌悪,道徳性,文化が嫌悪をつくりだす過程
(9)嫌悪の構造
(10)汚染
(11)嫌悪の隠蔽
(12)嫌悪と身体開孔部
(13)嫌悪のダイナミクス
(14)嫌悪の生物進化と文化進化
(15)ユーモア
6.結論
第2章 嫌悪感受性:測定法と操作的定義
1.嫌悪の測定法
(1)The Disgust and Contamination Sensitivity Questionnaire(DQ)
(2)The Disgust Scale(DS)
(3)The Disgust Emotion Scale(DES)
(4)The Looming of Disgust Questionnaire(LODQ)
(5)DQ,DS,DES,LODQに関するまとめ
(6)The Disgust Propensity and Sensitivity Scale(DPSS)
2.嫌悪の行動的査定法
3.嫌悪感受性は他に類のない臨床的概念だといえるか
4.結論
第3章 嫌悪の認知的側面
1.認知バイアスと嫌悪
2.嫌悪と情報処理
(1)注意バイアス
(2)解釈バイアス
(3)記憶バイアス
3.情報処理過程に関する実証的知見のまとめ
4.嫌悪に関する情報処理過程研究のこれから
5.結論
?U.反応パターン
第4章 嫌悪の獲得と維持:発達と学習の観点から
1.ライフスパンと嫌悪
(1)乳幼児期の嫌悪
(2)児童期と思春期の嫌悪
(3)成人期の嫌悪
2.嫌悪の獲得に関わる過程
(1)学習経験と連合条件づけ
(2)認知過程
(3)生物学的メカニズム
(4)社会文化的影響
3.嫌悪の維持に関わる過程
4.嫌悪の学習解除は可能か?
5.要約と今後の課題
第5章 嫌悪と文化
1.基本感情としての嫌悪
2.嫌悪の表情
3.嫌悪の交差文化的研究
(1)感情の表情認知
(2)嫌悪表情の読み取りの正確さ
(3)隔絶された文化圏
(4)自由反応
(5)嫌悪に付随する感情
(6)社会的なメッセージ
(7)その他の方法
(8)強度
(9)生理的特徴
(10)嫌悪誘発子
(11)恐怖
(12)感情を表す言葉
4.結論
第6章 嫌悪の心理生理学:動機・作用・自律神経
1.感情への心理生理学的アプローチ
2.嫌悪と,感情の基本的問題
3.嫌悪の動機づけ作用
(1)驚愕反応
(2)皺眉筋の筋電図
4.嫌悪に特有の行動傾向
(1)今後の研究分野
5.嫌悪に関する自律神経の心理生理学
(1)表情の表出
(2)画像の閲覧
(3)動画の視聴
(4)イメージ
(5)ニオイ
6.結論
第7章 嫌悪の機能的神経解剖学
1.ヒトの感情の神経生物学的理論
2.嫌悪の機能的神経解剖学
(1)嫌悪知覚
(2)嫌悪感
(3)嫌悪とその障害の機能的神経解剖学
3.重要な側面と将来への展望
?V.嫌悪の障害
第8章 嫌悪と動物恐怖症
1.動物恐怖と嫌悪感情の関係を示すエビデンス
(1)小動物恐怖・恐怖症
(2)非臨床群における嫌悪感受性と動物恐怖
(3)嫌悪感受性とクモ恐怖
(4)クモについての嫌悪的信念(Disgust Beliefs)とクモ恐怖
(5)クモ恐怖者におけるクモ関連語と汚染関連語に対する認知バイアス
(6)動物恐怖症における分化結果(differential outcome)に関する信念
2.理論的問題
(1)動物と嫌悪を関連づけるものは何か
(2)動物恐怖の獲得に嫌悪は因果的役割を果たしているか
3.結論
第9章 嫌悪と血液・注射・外傷恐怖
1.BII刺激に対する嫌悪反応を引き起こすものは何なのか?
2.嫌悪はBII恐怖にどのように関与するのか?
3.嫌悪はBII失神にどのように関与するのか?
4.BII恐怖の統合的モデル
第10章 嫌悪と汚染恐怖
1.汚染恐怖とはなにか
(1)動物恐怖症と血液・注射・外傷恐怖症
(2)汚染恐怖型のOCD
(3)嫌悪と強迫観念
(4)共感呪術
(5)評価条件づけと嫌悪・汚染恐怖
(6)嫌悪の馴化
2.要約と今後の方向性
第11章 食物,身体,精神:摂食障害における嫌悪の役割
1.食物に基づく嫌悪の起源
2.神経性無食欲症と神経性大食症
3.嫌悪と摂食障害症状
4.摂食障害における嫌悪と道徳性との交点
(1)道徳的,宗教的な価値
(2)性およびセクシュアリティへの態度
5.摂食障害における嫌悪の実証研究
(1)嫌悪および嫌悪感受性の個人差
(2)摂食障害関連刺激に対する恐怖および嫌悪
(3)表情認知
6.摂食障害における嫌悪と恥
7.結論
第12章 性と性機能不全:嫌悪・汚染感受性の役割
1.嫌悪と性
(1)中核嫌悪
(2)動物性嫌悪
(3)社会道徳性嫌悪
2.嫌悪と性機能不全
(1)欲求,覚醒,オーガズム
(2)膣痙攣について
3.治療的示唆についての考察
第13章 嫌悪への治療
1.感情障害の心理療法
2.状態嫌悪と特性嫌悪
3.認知行動療法に対して嫌悪が示唆すること
(1)嫌悪は治療転帰を予測するか
(2)嫌悪は治療の中で低減するか
4.嫌悪を扱えるように治療法を改良することは可能か
(1)不適応な認知
(2)感情回避と気分不一致な行動傾向
5.今後の研究について
(1)嫌悪感受性と嫌悪反応性(disgust reactivity)
(2)嫌悪の主観報告は生理指標と一致するか
(3)嫌悪の馴化が恐怖より遅いことは問題になるか
(4)現行の治療法に修正は必要か
(5)嫌悪と摂食障害
(6)複合的な嫌悪反応
6.結論
第14章 嫌悪と精神病理学:治療と研究の新たな領域と,その次なるステップ
1.嫌悪と精神障害:実証的知見の範囲
(1)恐怖症性回避
(2)その他の精神障害
2.精神病理学における嫌悪の包括的モデルへの招待
(1)精神障害は弱い嫌悪とも関係するのだろうか
3.嫌悪の治療
引用文献
人名索引
事項索引
目次
1 嫌悪の理論とアセスメント(嫌悪:21世紀における身体と精神の感情;嫌悪感受性:測定法と操作的定義;嫌悪の認知的側面)
2 反応パターン(嫌悪の獲得と維持:発達と学習の観点から;嫌悪と文化;嫌悪の心理生理学:動機・作用・自律神経 ほか)
3 嫌悪の障害(嫌悪と動物恐怖症;嫌悪と血液・注射・外傷恐怖;嫌悪と汚染恐怖 ほか)
著者等紹介
堀越勝[ホリコシマサル]
1956年群馬県に生まれる。1995年米国バイオラ大学大学院臨床心理学博士課程修了。1999年米国ハーバード大学医学部精神科医ポスドク修了。現在、国立精神・神経医療研究センター/認知行動療法センター研修指導部長(臨床心理学博士、Ph.D.)
今田純雄[イマダスミオ]
1953年大阪府に生まれる。1983年関西学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士課程後期課程修了。現在、広島修道大学人文学部・同人文科学研究科教授(文学修士)
岩佐和典[イワサカズノリ]
1981年大阪府に生まれる。2010年筑波大学大学院人間総合科学研究科一貫制博士課程修了。現在、就実大学教育学部講師(心理学博士)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
-
- 和書
- 夜は猫といっしょ 〈6〉