内容説明
エビデンス・ベイスト・メディスン(EBM:科学的根拠に基づく医療)とナラティブ・ベイスト・メディスン(NBM:物語と対話に基づく医療)を共に大切にする医療の在り方とは。近代医学に基づく適切な医療の提供も、病む主体の全人的な側面の重視も、「有効な1つの物語」として扱い軽やかに統合していく枠取りを会話形式の中に素描する。
目次
グールド教授の死
高血圧は実在するか?
ナラティブってなあに?
患者さんはなぜ安心できないのか?
おなかが弱いとはどういうことか?
ストレスについて考える
ライバルを心身症にする方法
再びストレスについて考える
イヤな気分をどうするか
性格は診断できるか?
性格という物語
腰痛のエビデンス
医療と物語
大切だけれど目に見えないもの
ナラティブ三年エビ八年
著者等紹介
斎藤清二[サイトウセイジ]
1975年、新潟大学医学部卒業。県立がんセンター新潟病院、東京女子医科大学消化器病センター、新潟大学医学部附属病院第三内科などでの臨床研修を経て、1979年、富山医科薬科大学医学部第三内科助手。1988年、医学博士。1993年、英国セントメリー病院医科大学へ留学。1996年、富山医科薬科大学第三内科助教授。2002年より富山大学保健管理センター長・教授。専攻は、消化器内科学、心身医学、臨床心理学、医学教育学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とある内科医
29
グリーンハル先生も積んでいるが、ナラティブという概念を見直すべく本書から。男女2人の学生と著者による対話から構成されており、サラサラと読み終えた。 中堅医師としてはもう少し内容を深めたいのと、個人的にはジョジョでしか見たことのない「○○じゃあないか」という節回しにとても引っ掛かり、「あ」に出会う度に読書リズムが崩れた。本質ではないのだけど、どうしても「あ」に対する不満が残ってしまった。2022/01/26
shin_ash
3
因果推論の林先生がEBPMの文脈でおすすめしていた本だった様に思う。ナラティブと言うのが最近気になってきたので読むことにした。本書は医療関係者向けにナラティブベースドメディスン(NBM)とエビデンスベースドメディスン(EBM)について、NBMに軸足を置いて会話形式で解説し、NBMとEBMの関係について著者の考えを述べるものだ。確かに、EBMを当然の要素としたNBMと言う視座は納得できると共に考えさせられる。エビデンスと近年は言うが天下御免の印籠ではない。それぞれの物語で位置付けてこそのエビデンスだろう。2022/03/17
ソーシャ
2
NBMの専門家がNBMとEBM、そしてその統合について対話形式で分かりやすく解説した本。ナラティブの概念や、ストレス学説、構築主義的な考え方など、いわば人文科学的側面からの医学についての大まかな知識や考え方が得られるので、医療系の人にお勧めできる本です。2014/11/29
わんぱら
1
表紙はしょうもないが、内容はエビデンスベースドメディスン(EBM)とナラティブベースドメディスン(NBM)それぞれの考え方及び両者の接合について対話篇によって説明・検討している本。かなりわかりやすく、読みやすい。医療に限らず、EBとNBの関係についても大きな示唆がある。とりわけ、エビデンスの反権威性(偉い医学者とかの権威を否定して証拠に基づいて判断すること)を重視しつつ、そのエビデンスを補完・昇華するものとしてナラティブを位置づけるのは、なるほど。ナラティブだけでは危険すぎるという点への反省も促す。2021/08/03
まさきち
1
なぜこんな表紙なんだろうなぁ,という残念感は横においといて,最近気になっていたナラティブについて概要を教えてくれた本.全編対話形式だけれども,2人の生徒の物わかりが良すぎて,読者が置いていかれるのが残念なところ.ボンクラで物わかりの悪い学生さんもいるとよかったのに.著者の言う「EBMをきちんとやればNBMはわかってくる」という主張にはすごく納得.逆に科学のことをよくわかってないのに「患者の語り」とか言われちゃうと……というあたりの話はやめとくか.思いつきよりエビデンス,でも,エビデンスも万能じゃない.2015/02/25