内容説明
歴史に否定されたはずの「自己責任論」が復活し、人びとを分断し、社会を荒廃させ、新自由主義的政策を加速する。格差を拡大し、「社会権」を衰退させ、社会保障、労働法制、さらには「国民国家」の解体にまですすもうとする新自由主義。人びとの「心性」までを歪める、そのイデオロギーの歴史、本質、そして超克の道を、庶民とともに学ぶ社会哲学者が提示する。
目次
1 自己責任論―成立と機能
2 日本型「自己責任論」の特徴と批判的検討
3 「自己責任論」への対抗
4 新自由主義とは何か
5 新自由主義との対抗の基軸としての「社会権」の再建
6 おわりにかえて―社会権の基礎としての人間の根源的平等
著者等紹介
吉崎祥司[ヨシザキショウジ]
1945年生まれ。北海道教育大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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青蓮
31
自己責任論の性質や成立の背景、それが含む問題点などを明らかにした本。なんでも「自己責任」で片付けてしまうのは間違っている、それは単に思考停止をしているだけだと思いました。自己責任論を打破していくためには社会的責任を確立すること、それと合わせて改めて普段意識にのぼらない社会権を知る事が必要だと思いました。少々難しい部分もありましたが、割と易しく書かれているので読みやすかったです。今の日本を取り巻く現状について色々と考えさせられました。2015/02/13
ゆう。
22
声高に「自己責任」論がふりまかれている中で、「自己責任」論の歴史的背景を顧みつつ、新自由主義を政治的・政策的に支えるイデオロギーであることを鋭くついた本となっています。日本型の「自己責任」論が持つ、「自己決定」の危うさも指摘され、「弱者」の生きる尊厳が守られない社会であることを批判しています。そのうえで、社会権の重要性を指摘し、日本では事実上、開発主義国家が蔓延り「福祉国家」が不在であったため、生存権や労働権、教育権などの社会権が十分に定着しなかったことが述べられています。平等についても考えれました。2015/03/17
Narr
10
いわれのない「自己責任論」の呪いを徹底的に解く本…と言えるかも(その口ぶりは多少油っぽささえ感じます)。筆者は、自己決定論や自立・自助思想を恣意的に取り込み敷衍された「自己責任論」を新自由主義的支配のために正当化・合理化されたイデオロギー(政策言語)と断じ、日本社会で欠落している社会的・公共的責任を社会権の再興と連帯により取り戻そうと主張しています。具体的な運動方法までは触れてませんが、「呪いを解く」という意味では「自己責任論」と新自由主義の社会的な解説でその第一義を十分果たす内容かと。2021/02/10
Em
3
2年の基礎演習で自己責任論についてレポートを書いた時の参考図書。 同時、ジャーナリストの安田純平氏への自己責任論批判に、なんとなく違和感を覚えたことからこのテーマを選んだ。 新自由主義がもたらした負の側面、これは『のりこえる』のか。『変える』ではないか……
抹茶ケーキ
1
自己責任論をネオリベと結び付けてネオリベの無責任さを批判。対応策として社会権と連帯を重視。「ネオリベ入門」としてはとてもわかりやすい。ただ自己責任論をネオリベに全部回収していいんだろうかと思った。なんか他に要因があるような気もするのだけど。2015/11/05