出版社内容情報
「スマホで失明」って大げさな、と思ったあなたへ
「はじめに」の「ある高校生に起こった悲劇」だけでも読んでください
ある高校生に起こった悲劇
デジタルデバイスの急速な普及による、「スマホ失明」リスク。その急増の波は、もちろん、日本にも押し寄せています。
わかりやすい例が、若い人、特に10代の間で「急性スマホ内斜視」の患者さんが目立つ
ようになってきたことです。
内斜視とは、左右の眼のどちらか、もしくは両方が内側を向いている状態のこと。
私たちの眼は、近くを見るとき、内側を向く「寄り眼」状態になります。
このとき、長時間近くのものを見続けて、寄り眼状態が固定化すると、固定化した視線の先にしかピントが合わなくなります。
すると、それ以外の場所を見たときに、二重にダブって見えるようになるわけです。
ちなみに急性内斜視は、もともと近視がある人が、長時間、近距離でものを見続けることで、発症しやすい傾向があります。
<中略>先日も、私が診療している山口県防府市のかわもと眼科に、16歳の男子高校生がやってきました。お母さんに付き添われてきた彼の訴えは、「黒板が見えない」「教科書が見えない」というものでした。
検査結果に目を通すと、裸眼視力は右眼が0・03、左眼は0・04。すでに近視がかなり進んだ状態です。
彼はメガネをかけて片眼ずつで見れば、問題なく見えると言います。しかし両眼で見た瞬間に、見えなくなるんだとか。遠くの景色が見えない、授業中に黒板を見ようとすると見えない。教科書やマンガはもちろん、愛用しているスマホも見えない……。
彼に普段の生活を聞いたところ、毎日、かなり長い時間スマホを見ていることがわかりました。そのため、眼球が内側に寄った状態で固定化してしまい、片眼だけなら対象物にピントを合わせられても、両眼を使ったときにピントが合わなくなっていたのです。
「お子さんの眼は、スマホの使いすぎが原因で、急性内斜視を起こした可能性が高いです。
メガネで矯正が可能か、先ほど試してみましたが、矯正はできない様子です。詳しくはこの病気の専門の先生に聞いてみる必要がありますが、手術が必要かもしれません」
私がそう言うと、男の子とお母さんの様子がたちまち変わりました。
単なる近視だろうと思って受診したのに、まさか手術が必要になるとは思ってもみなかったのでしょう。この段階になって、ようやく二人は、「先生、どうすればいいですか?」とあせり始めました。
<中略>後日、某県の大学病院で手術となりました。
ただ……残念なことに、手術をしても、見え方は完全に元通りにはならなかったそうです。彼には、常にものがダブって見える「複視」の症状が残ってしまいました。
人生100年時代という超長寿時代を生きる彼が、わずか16歳の若さでものがダブって
見える病気を発症したことは、残り80年の人生の質を、これほどまで大きく下げるのです。
内容説明
近視の進行からの失明という結末!医療現場の実態と最新のデータからこの危機と対応策を解説。
目次
第1章 新型コロナ禍で進行する「失明パンデミック」(新型コロナの陰で進行する、もう一つのパンデミック;「遺伝」以上のスピードで、近視人口が増えている ほか)
第2章 「スマホ」と「近視」(ヒトの目のしくみ;治せる「仮性近視」と、治せない「軸性近視」 ほか)
第3章 エビデンスのある、近視の進行抑制法とは(近視抑制法1 近業時間を減らす;近視抑制法2 1日2時間以上の戸外活動 ほか)
第4章 行動経済学×近視対策(日本の近視対策は80年前から変わっていない;エビデンスを示されても、実践できない私たち ほか)
第5章 スマホとの最適な共存を目指して(シリコンバレーの重鎮は、子どもにスマホを使わせない;「SNSのカリスマ」もデバイス使用を制限 ほか)
著者等紹介
川本晃司[カワモトコウジ]
眼科専門医(医学博士)・MBA(経営学修士)。1967年山口県生まれ。高校卒業後、産業廃棄物処理の日雇い労働をしていたが、一念発起して受験勉強を始め、28歳の時に山口大学医学部に入学。34歳で眼科医となり、44歳で眼科クリニック・かわもと眼科の院長となる。専門は角膜。2021年に北九州市立大学ビジネススクールでMBAを取得。現在は眼科専門医としての傍ら、北九州市立大学大学院で医療と認知心理学とを掛け合わせた学際的な研究を行っている。現在の研究テーマは「医療現『場』の行動経済学」と『医師と患者の認知心理学」(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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