内容説明
近代化以降、育児は家庭の中で果たすべきプライベートな仕事として私的世界に囲い込まれる傾向にあった。しかし人類の長い歴史をふりかえってみても、現代ほど育児が母親の単独責任として特化されている時代はない。核家族特有の「夫は外で仕事、妻は家庭で家事・育児」という母親の単独育児責任、家庭への囲い込みが、現代の母親の育児ノイローゼ、児童虐待など社会問題の原因となっている。本来、育児と子育ては異なる用語である。育児とは、母親が家庭という箱の中で、たった一人で子どもを育てている様子を表す。それに対して、子育てとは子どもが地域社会の中で複数の大人たちに囲まれて自ら主体的に成長する様子を表している。本書は、今までの私的世界に閉じ込められてきた育児をふたたび公的世界、すなわち地域社会の広い輪の中へとひっぱりだそうという試みである。
目次
第1章 女性のライフスタイルと少子化(結婚適齢期意識の希薄化と少子化;子どもの福祉と甘えの関係)
第2章 母親と子育て福祉―多様化する母親の子育てライフスタイル(母親の育児役割と子ども;キー概念の明確化―主体性をめぐって ほか)
第3章 地域社会と子ども(子ども虐待という現代社会の病理;子どもの虐待 ほか)
第4章 これからの子育て福祉の展開(子どもと保育事情;家庭的保育のすすめ)
結びにかえて:「つなぎの時代」に向けて―子育て福祉の構築
著者等紹介
栗山直子[クリヤマナオコ]
1971年兵庫県芦屋市生まれ。2003年大阪市立大学大学院博士後期課程単位取得退学。関西福祉大学社会福祉学部専任講師
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。