内容説明
近年、教育史研究においても、従来の郷土史、地方史にかわって、地域社会の自立性を重んじ、独自の歴史を発掘し、叙述しようとする「地域史」への関心が高まりをみせている。本書は、そうした状況をふまえて、地域における多様な学びの諸相に目をむけ、それら相互の教育の歴史性や個性を明らかにしようとしたもので、地域的には、北は東北から南は沖縄の地を対象とし、また時代的には近世から現代までをテーマとして、丹念に跡づけた論考によって構成されている。「地域」という概念をあくまでも人びとが生活を営みつつ、かつ独自で個性的な文化を不断に創造する拠点としてとらえ、その教育・文化の歴史的解明をとおして、全体として「地域」を対象とした、新たな日本教育史研究の再構築が試みられている。
目次
第1章 幕藩体制における地域と教育
第2章 近世の地域・教育・民衆運動
第3章 近世奈良町の人口・家族構成と子どもの文字学習
第4章 草創期の学校と町村
第5章 近代教育成立期における教育の国家統制と教育自治の相克
第6章 水上生活者の子どもと地域の学校
第7章 日清戦争後の沖縄における学校と地域―女子の和装に注目して
第8章 地域社会における青年・成人の“教養”と学習―埼玉県入間郡豊岡大学を中心に
第9章 地域における「教育科学」受容の論理―北方教師が担った教育科学運動
著者等紹介
千葉昌弘[チバマサヒロ]
1941年生れ。東北大学大学院教育学研究科博士課程修了。仙台大学講師、高知大学助教授・教授を経て、現在、岩手大学教育学部教授。(地域民衆教育史・教育運動史)
梅村佳代[ウメムラカヨ]
1944年生れ。名古屋大学大学院教育学研究科修士課程修了。博士(教育学)。暁学園短期大学教授を経て、現在、奈良教育大学教育学部教授。(近世民衆教育史・家族史)
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