内容説明
友だちとのトラブルで暴力をふるう。授業を乱す。叱られると暴言を吐く。突然「きれて」怒りに支配されてしまう小学生を、どう理解し、援助するか。子どもの心理療法の専門家が、新しい視点と具体的な実践例を豊富に提示する。
目次
第1部 感情はどのようにして育つのか?(感情の発達のプロセス;いまどきの親子の関係;怒りをコントロールできない子どもたちの感情の発達)
第2部 問題の成り立ちと援助の方法(子どもの「問題」はどのように成り立っているのか?;どのように援助するのか?)
第3部 援助の実際(怒りをコントロールできない子どもへの援助の実際;クラスの子どもたちへの援助;クラスの保護者への援助;場面別・クラス担任の対応の工夫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パフちゃん@かのん変更
74
怒りをコントロールできない子というのはいる。それを単に我が儘だとか、家庭のしつけがなっていないとか、担任の指導が甘いとかで済まされる問題ではない。原因は個々によって違うが、ADHDなどがあったり、親の暴力、いい子でいることのストレスだったりもする。50mを7秒で走れる子もいるが11秒かかる子もいる。7秒で走れと叱っても走れるものではない。怒りのコントロールが出来ない子の気持ちに寄り添うことも大切だし、何も悪いことをしていないのに被害を受ける周りの子の気持ちも大切だ。力で押さえつけるだけでは良くならない。2016/03/26
なると
23
小学生にもなると、幼児期に比べプンプンわめくのもベシベシされるのもパワーが違うわけで、親としては不安になってしまう。しかし、健全な成長過程と思えばいたずらに不安に思うこともない。怒りをコントロールできない子どもの問題は、発達障害と、大人の現在の問題への解決努力が誤っている場合に、問題を増幅させているという。躾ができてないとかそういうことじゃなく、よく子を観察・理解せず、適切に対処できていない大人側の問題もある。この観点は意識していなかった【備忘録】今の親の世代は子を「ことば」で→2016/09/29
とよぽん
22
怒りとは、人の苦しみを支配している感情。そして、「怒りは怒りとして認められ、そして哀しみにたどりついたとき初めて癒しとの接点をもつことができる感情なのでしょう。」という文に、あぁ、これが学術書の文なのか!何と洞察の深い、温かいまなざしで書かれた文なのだろう!と思った。筆者は臨床心理の学者である。親や教師など、主たる養育者の務めは子供の「感情の社会化」を図ることだ。納得。教育現場の方には非常に参考になる。2018/01/02
riviere(りびえーる)
17
文科省の発表によれば、小学生の暴力事件が増えているらしい。私が仕事で出会う小学生に対しても同じ実感がある。この本は怒りの感情をコントロールできない子どもをどう理解し、親や教師はどうに関わったらよいかについて具体的に書いてある本です。キレた子どもと大人との会話が台本のように書いてあるので分かりやすい。また、介入にフォーカシングや動作法を取り入れているところに興味を持った。2015/11/09
はなあぶ
13
怒りを制御できない大人についての理解を深めたくて読んだ。大人でも子供でも原理は同じで、制御できない程の怒りを抱えた人には、それなりの理由があることがよく分かった。養育者や指導者が、子供に対してジャッジや意味づけを示す時には、慎重にすべきものだということがわかる。人は自分の心に何が起きているのかを客観的に正確に把握するのは難しく、言葉で表現することも難しい。子供なら尚更。相手の心に耳を傾けない自己判断を押しつけるのは、相手の感情を無視する行為。危険。2015/05/17