内容説明
言葉が「降り積もる」とすれば、あなたは、どんな言葉が降り積もった社会を次の世代に引き継ぎたいですか?息苦しさをそっと弛める、18のエッセイ。
目次
正常に「狂う」こと
励ますことを諦めない
「希待」という態度
「負の感情」の処理費用
「地域」で生きたいわけじゃない
「相模原事件」が壊したもの
「お国の役」に立たなかった人
責任には「層」がある
「ムード」に消される声
一線を守る言葉
「心の病」の「そもそも論」
「生きた心地」が削られる
「生きるに遠慮が要るものか」
「黙らせ合い」の連鎖を断つ
「評価されようと思うなよ」
「川の字に寝るって言うんだね」
言葉が「文学」になるとき
終話 言葉に救われる、ということ
著者等紹介
荒井裕樹[アライユウキ]
1980年東京都生まれ。二松學舍大学文学部准教授。専門は障害者文化論、日本近現代文学。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
108
言葉。いつからだろうか、言葉に対する拘りが出てきたのは・・と考えてみる。明確に、この日からとは言えるものでもない。遠く、想いを馳せると10年ほど前からのように思う。人に伝える機会が増えたこと、いろいろな人的ネットワークが増えたこと。そんな今、改めて考えると、言葉がここまで軽んじられてしまうとは思わなかった。短期的視点だけでなく、短絡的な、憂さ晴らしのような言葉。それを、敢えて使わせようとする人たち。まずは、一人のことを大切に考えて、言葉を使うことから。2021/11/30
はっせー
92
言葉についてモヤモヤしたことがあるひとにおすすめの本になっている。読書友達からのおすすめの本。言葉。私たちが常に使っているものでありその使い方1つで薬にも毒にもなるもの。そんな言葉について思考を深めたのがこのほんになっている。その中でも障害者の活動家さんの言葉とそこでの出来事を中心に話が展開される。最後に出てくる言葉に「安易な要約主義」が広がっていて想像力が削がれていると書かれていた。確かになんでも要約して伝えろとしている。本の感想も含めて。だからこそ本の一端を見せることができる窓をつけたい!2023/07/04
憲法記念日そっくりおじさん・寺9条
89
少し前に高校の日本史から坂本龍馬が消えるというニュースがあったが、偉人やヒーローは、教科書や戦記に出てくる人たちばかりではない。歴史にはもっともっと人間がひしめいている。偉人はもっと近くにいるし、ヒーローはさっきまでいた。そんな事を考えさせられる語録エッセイ。障害者や公害、ジェンダーの問題に取り組んだ活動家たちの、大切にできる言葉の数々を紹介。軽く読み始めると、心に大事な事が少しずつ積もる。横田弘、田中美津、横塚晃一、花田春兆、緒方正人…知らない人も多い偉人たち。私達は素敵な人を見過ごしながら生きている。2021/09/27
ネギっ子gen
77
本書は、「マイノリティの自己表現」をテーマに研究を続ける文学者が、障害者運動や反差別闘争の歴史の中で培われてきた「一言にまとまらない魅力をもった言葉」と「発言者たちの人生」を一つひとつ紹介していくことを通して、この社会で今、何が壊されつつあるのか、生きづらさを感じている人に、そして自らに向けて綴った18のエッセイ。印象的な装画・挿絵は、鹿児島にある障がい者支援施設「しょうぶ学園」デザイン室統括主任の榎本紗香さんが担当。著者については、朝日新聞文化欄のコラム「生きていく言葉」で知った。共鳴しながら読む。⇒ 2022/09/13
ハイランド
66
私が「障害者との共生を」と言ってもそれは中身のない上辺だけの言葉に過ぎない。私達の周りには、政治家の人を煽り騙そうとする言葉や、ネット上の憎悪や偏見に満ちた薄汚い言葉が溢れている。この本は、いかに私達が見たいものだけを見、聞きたい言葉だけを聞き、社会の歪から目を背けているかを気づかせる。社会的弱者といわれ、役に立たぬといわれ続けた障害者や精神病者、ハンセン病患者達の慟哭にも似た「本当の」言葉が書かれている。その一つ一つが途轍もなく重い。願わくば私のこの口からこぼれる言葉に、一欠片でも誠が含まれますように。2022/03/05